研究課題
目的】膵癌の遺伝子研究は多くされているが、未だ膵癌は予後不良な癌腫で、新規膵癌治療の開発が重要である。本研究は、膵癌特異的な癌抑制遺伝子および癌遺伝子を同定する目的で、SNP arrayを用いた包括的DNA一次構造異常解析と発現プロファイルを統合させ、新規膵癌治療の標的分子を同定することを目的とした。【方法】切除した凍結膵癌組織20症例の膵癌細胞をマイクロダイセクションにて選択的に回収し、DNAとRNAを抽出した。DNAはGeneChip Mapping Array 100K (Affymetrix社)を用い、同一個体の膵癌細胞と正常組織のデータを比較し、膵癌特異的なloss of heterozygosity (LOH)とcopy number changeを網羅的に検索した。また膵癌RNAはGeneChip Human Genome U133 plus 2.0 array (Aaffymetrix社)を用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、コントロールとしてマイクロダイセクションにより回収した正常膵管細胞のマイクロアレイデータと比較し、膵癌特異的に発現する遺伝子群を同定した。【結果】包括的DNA一次構造異常解析において、homozygous deletionは6領域に認め、CDKNA2AとCDKN2Bの存在するch9p21.3は9例(45%)に、またSMAD4が存在するch18q21.1は5例(25%)にhomozygous deletionを認めた。また5例(25%)以上の症例でLOHを認めた領域は30領域であった。Homozygous deletion領域の遺伝子群はRNA発現をほとんど認めなかったが、LOH領域の遺伝子群は、正常膵管細胞のRNA発現と比べ、低発現のサンプルと同等の発現のサンプルに分類された。さらに7領域で、5例(25%)以上の症例でcopy数の増加を認めた。
2: おおむね順調に進展している
本研究において最も時間を要する、膵癌凍結組織からマイクロダイセクションを行って、がん細胞あるいは正常膵管細胞のみを採取する作業と網羅的遺伝子解析は2/3終了しており、おおむね順調な進展と考えている。
膵癌における、Gene expression profileと包括的DNA構造異常解析を統合し、膵癌の早期診断および治療に有効な遺伝子群の同定を試みる。それらのターゲット遺伝子が同定できた時点で、in vitroにて遺伝子群をsh RNAを用いて発現を抑制し、それらの遺伝子群が膵癌に及ぼす影響・働きを同定する。なかでも、膵癌特異的に高発現を認める遺伝子は、免疫療法をはじめとする新規膵癌治療のターゲットになるので、それらの遺伝子群の機能解析のみならず、100例以上の膵癌切除標本のタンパク発現を調べ、それらの遺伝子が臨床学的にどのような意義があるのかを検証する。本研究にて、新規膵癌治療のターゲットと同定できた膵癌特異的に高発現する遺伝子群は、ペプチドワクチン治療に応用する予定である。ペプチドを作成し、CTLの誘導を確認した後、Phase Iによる安全性を証明した後、Phase II/IIIに進み、治療の有効性を証明する予定である。
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