研究概要 |
胆道癌は早期発見が困難であり、有効な抗癌剤も少なく、極めて予後不良な疾患と考えられる。近年、新しい癌治療法として癌特異抗原を標的とした癌治療ワクチンの臨床開発が進められている。その中でも癌特異抗原のアミノ酸配列を基に合成したペプチドワクチンが多数開発され、我々も胆道癌に対するペプチドワクチンの臨床試験を実施してきたが、最新の癌研究成果からの知見では、癌治療において真の治療効果を得るためには癌幹細胞を標的とした治療が重要であることが示されてきた。そこで我々は胆道癌幹細胞に高発現する癌抗原を同定し、胆道癌幹細胞に対するペプチドワクチンの開発を目指して本研究を開始した。平成25年度ではヒト胆道癌細胞株IsCC及びNaCCからそれぞれ癌幹細胞分画の分離を試み、癌幹細胞と癌非幹細胞分画における癌抗原の発現の差異を比較解析した。癌幹細胞の分離には、癌幹細胞特異的分子とされるCD13, CD24, CD44, CD90, CD133, CD166, CD326分子等に対するマイクロビーズ結合抗体を用いて、磁気を利用した細胞分離を行った。IsCC及びNaCC細胞株から分離された癌幹細胞特異分子陽性分画と陰性分画の各細胞集団からtotal RNAを抽出し、cDNAを作成して、胆道癌特異抗原とされるLY6K, IMP3, TTK, DEPDC1, CDH3, CDCA1, KIF20A, FOXM1, MELK, HJURP, WT1, GPC3, MUC1のmRNAの発現をrealtime PCRにて比較解析した結果、癌幹細胞分画で発現が強い抗原、癌幹細胞分画で発現が弱い抗原、癌幹細胞分画と非幹細胞分画での発現が同等の抗原に分類された。この結果より、胆道癌幹細胞に特に発現の強い癌抗原の存在が確認され、胆道癌幹細胞を標的としたペプチドワクチンの開発の可能性が示された。
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