研究課題/領域番号 |
24592043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
中村 雅史 川崎医科大学, 医学部, 教授 (30372741)
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研究分担者 |
堤 宏介 川崎医科大学, 医学部, 助教 (00467937)
中島 洋 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60623048)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 膵癌 / 形態形成シグナル / 癌性幹細胞 / 微小環境 / 線維芽細胞 |
研究概要 |
(1)新鮮切除標本よりの初代細胞培養法確立:倫理委員会の了承を得た後、新鮮膵癌切除組織よりの初代細胞培養を行った。方法は、新鮮切除組織を細切し細胞の自然拡散を待つ方法を採択した。現在、複数の初代細胞が保存されている。 (2)膵癌の発症リスクであるインスリンと抑制的であるメトフォルミンが、膵癌微小環境に影響に与える影響の検証をした。先ずは、癌細胞―間質応答の主要シグナルであるHedgehogシグナルを対象にした。膵癌培養細胞を用いて、シグナルを構成する各因子(Shh, Gli1/2)に対する免疫染色を行った。現在、メトフォルミンによるシグナル抑制が示唆される染色像が得られつつある。今後、RT-PCR等の多角的な解析を予定している。Hedgehogシグナル依存性の癌腫は多岐に渡るため、膵癌のみならず他の多くの癌での新たな治療法確立に直結する可能性がある。 (3)胆道癌は、膵癌と抗癌剤等のスペクトラムが一致しており、似通った生物学的を持つと考えられている。特に、胆嚢癌は膵・胆管合流異常(PBM)というハイリスクが確立している。膵癌の癌幹細胞モデルとしてPBM・癌での胆嚢組織内MicroRNAを比較することで、癌性幹細胞の比率が高いと予想される発癌段階でのMicroRNAの役割を解析した。PBM、胆嚢癌、正常胆嚢切除組織のmiR発現解析をmicroarrayとReal-time PCRにより解析を行った。結果、miR-202、483-5p、626がPBM・胆嚢癌双方で高発現していた。また、多変量解析でmiR-625が独立した胆嚢癌の予後不良因子であった(p=0.049)。以上より、miR-202, 483-5pはPBMからの発癌段階に関与し、miR-625はPBMの発癌から癌進展に関与する因子である可能性が示唆された。類似する膵癌についてもこれらの役割を明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①新鮮切除標本よりの初代細胞培養は、比較的困難とされている。本課題では、初代培養細胞が基本の研究材料となるため、課題遂行の律速段階と考えていた。今回、細切法にて確実な初代細胞培養法を確立できたため、これを用いて多岐の解析を行う基本が確立できた。 ②初代培養の確立と並行して、Hedgehogシグナル因子の解析法を確立した。特に、Gli1, Gli2は核内移行の検出が困難と予想されたが、選択的な核染色像を得ることができた。初代細胞培養とともに、基本的な解析手技が確立したため、今後の課題遂行が容易となった。 ③確立した染色法を用いて、形態形成シグナルの制御因子の探索を開始した。膵癌の発症リスクとなるインスリン、および制御因子である糖尿病治療薬メトフォルミンを用いたパイロット実験で、メトフォルミンが上記シグナルの制御可能であることが示唆された。膵癌微小環境におけるシグナル制御法確立が最終目標であるが、その有力な制御因子となる可能性があり、今後の探索の重要な起点となる。また、メトフォルミンは糖尿病治療薬として長い使用経験が積まれており、メトフォルミンの制御様式を明らかにすることで、安全かつ広範な癌に有用な新しい癌制御法の確立が期待できる。 ④胆嚢癌で同定された発癌に関わるMicroRNAは、膵癌においても同様の役割を果たしている可能性があり、今後の膵癌における微小循環制御因子の有力候補を得ることができた。今後、新鮮切除標本・初代培養細胞を用いてこれらMicroRNAの膵癌組織における発現・作用を明らかにしていく。 ⑤癌性幹細胞制御のための標的物質スクリーングのための自己抗体探索:癌性幹細胞で過剰発現される物質が自己抗体を誘発するという仮説で行っている膵癌患者の血清スクリーニングで、患者血清に認識されるいくつかの候補物質が同定されており、今後の本課題実行上のよい標的になる。
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今後の研究の推進方策 |
1:初代培養細胞の蓄積・保管:当院では、年間40例程度の膵癌切除が行われている。H24年度に確立された初代培養系の手技を用いて、膵癌切除組織より癌細胞・間葉細胞の分離・培養・保管をすすめる。 2:発現プロファイルの解析:分離・保管されている間葉系初代培養細胞の発現プロファイルを調べる。形態形成シグナルの活性化状態は、シグナル上の因子に対する抗体やRT-PCRによって検定する。先ずは、Hedgehogシグナル各因子の発現状況を調べ、シクロパミンにより古典的経路の存在を確認する。 3:形態形成シグナルの制御因子の探索①膵癌の発症リスクと判明している生化学物質はあまりないが、インスリンはその想定されるハイリスク因子の1つである。これは、主に糖尿病治療での発症率上昇より想定されているのであるが、同じく糖尿病治療薬であるメトフォルミンは膵癌の発症リスクを低下することが臨床研究より明らかになっている。これらの作用が形態形成シグナルに与える影響をさらに解析していく。②自己抗体を用いた本研究の治療標的である癌性幹細胞(CSC)組織での過剰発現因子のスクリーング:癌幹細胞の微小環境内では、正常幹細胞で認められるように、蛋白過剰発現とこれに伴う自己抗体の発現を認める可能性があると仮定し、膵癌患者血清内の自己抗体をプロテオミクスの手法でスクリーニングを行った。数種の自己抗体とその抗原を同定しており、今後、それらの因子の微小環境への影響を探索していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度未使用額は平成25年度請求額と合わせて、下記のとおり使用する。 1:初代培養細胞の蓄積・保管の費用:当院で切除する膵癌組織の初代培養を行う費用。膵癌切除組織を細切し、これを血清入り細胞培養液で培養する。増殖を確認後に-80℃で保管する。これら一連の培養・保管のための消耗品代(培養液・培養皿・保管用チューブ等)として使用する。 2:発現プロファイルの解析:分離・保管されている間葉系初代培養細胞の発現プロファイルを調べる。分離した切除標本より分離された腫瘍関連線維芽細胞のRNAを抽出しマイクロアレイを行う。このRNA抽出・マイクロアレイ代として使用する。 3:形態形成シグナルの制御因子の探索①膵癌の発症リスクと判明している生化学物質はあまりないが、インスリンはその想定されるハイリスク因子の1つである。これは、主に糖尿病治療での発症率上昇より想定されているのであるが、同じく糖尿病治療薬であるメトフォルミンは膵癌の発症リスクを低下することが臨床研究より明らかになっている。これらの作用が形態形成シグナルに与える影響をさらに解析していく。インスリン・メトフォルミンといった試薬の購入・各種シグナル因子の免疫染色のための抗体・RT-PCRのためのプライマー合成代として使用する。②自己抗体に認識される過剰発現因子の働き解明:癌幹細胞の微小環境内では、蛋白過剰発現とこれに伴う自己抗体の発現を認める可能性がある。膵癌患者血清内の自己抗体が認識する物質の抗体作成・RT-PCR用プライマー作成として使用する。
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