研究課題/領域番号 |
24592047
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安達 理 東北大学, 大学病院, 助教 (30375092)
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研究分担者 |
柿崎 周平 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (10547417)
齋木 佳克 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50372298)
熊谷 紀一郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80396564)
秋山 正年 東北大学, 大学病院, 講師 (80526450)
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キーワード | 医学 / 免疫抑制 |
研究概要 |
総肺静脈還流異常症の外科治療成績は、技術の進歩、周術期管理の改善等により向上しているが術後遠隔期成績に与える影響として、肺静脈-心房吻合部に生じる肺静脈狭窄(PVO)が問題点として残されている。術後PVOは約10~30%の頻度で生じると報告されておりしばしば肺静脈末梢に狭窄が進展しその予後は不良で致命的な合併症の一つである。PVOが発生し進展するメカニズムは未解明だが、病理学的所見として吻合部やその末梢の肺静脈に内膜肥厚が起こることが知られている。ラパマイシンは免疫抑制剤の一種でありdrug eluting stentにも応用され、血管系における内膜肥厚抑制効果が示されている。これら薬剤を局所的に徐放する技術を確立し、炎症細胞遊走やそれらのカスケードを抑制することでPVOを予防できれば、致命的な合併症の減少に寄与するだけでなくPVO発生のメカニズムの解明にも大きく寄与すると考える。これらを背景に、心臓の形態、解剖がヒトに近いと言われているブタを用い、肺静脈狭窄モデルの作成を試みている。肺静脈を切離、再吻合し、肺静脈狭窄を作成することで実臨床に近い病態モデルの作成が可能と考えている。現在左側開胸によりブタの左上・下肺静脈にアプローチし、術中に循環動態の変動なく、左上・下肺静脈の切離、再吻合が行えることは示せているがブタは胸郭が狭く、術野展開のために肺を圧排するなど肺に与えるストレスが大きいため、急性期に肺障害が顕著となり、急性期を脱しえないのが現状だ。肺静脈狭窄モデル作成においては、慢性期における病態変化が重要と考え、急性期の肺障害をいかに抑えるかという点が、このモデル作成における現段階での課題と考えている。ラパマイシンに関してはフィルム型の徐放剤を作成、徐放媒体としてポリL乳酸とカプロラクトンを用い先行研究に習い共溶媒を利用し、ラパマイシンと混合しフィルム状に作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在はモデル作成段階であり、作成したモデルの検討をし、その機序や、ラパマイシンの効果を検討するには至っていない。ラパマイシンフィルムに関してはモデル作成後に使用を開始し、その生態における薬物動態の変化や、内膜抑制採用の検討などを追加していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
術中の肺障害軽減可能な肺静脈への到達法を検討中である。現在は左開胸により左肺静脈を操作しているが、右開胸により右肺静脈の操作、胸骨正中切開による左右肺静脈の操作など多種の方法を検討しているところである。また、ブタで困難であれば、イヌなどに動物種を変更することも考慮している。モデル作成ができ次第、組織学的検査や免疫学的検討によりPVOの機序解明を図り、作成したラパマイシン徐放フィルムを用い、その効果を検討していく予定である。また徐放剤としての形状に関しては、実際に使用してみてその操作性などを考慮し、他形状の剤型も検討し改良を加えていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、昨年度はブタ肺静脈狭窄モデルに対して、ラパマイシン徐放フィルム添付し、慢性期における肺静脈狭窄抑制効果の判定および病理組織学的検索の予定であったが、前記の如く、ブタ肺静脈狭窄モデルの作成で進捗が滞っており、当初の使用予定額との間に差が出た。 ブタ肺静脈狭窄モデルを安定して作成し、昨年度予定されていたラパマイシン徐放フィルムの肺静脈狭窄抑制効果を判定することに昨年度未使用分を繰り越すことになる。
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