高齢化社会のため大動脈瘤患者が増加している。しかし、大動脈瘤に対する治療法はステントグラフトや人工血管置換による外科的治療に限られている。そのため、高リスク群において、手術後の重篤な合併症が危惧され、降圧療法のみで経過を見られることが多い。最近、このような高リスク群に対しての治療法として、侵襲の少ない遺伝子治療が検討され始めているが未だ確率されていない。そこで、新たな遺伝子導入による治療法としてCREB (cAMP response element binding protein)を標的とした動脈瘤の治療法の開発を計画した。 ヒト大動脈瘤壁由来の細胞でも、正常細胞同様にTGF-βを使用することにより、正常細胞と同様に細胞増殖を低下させることが確認できた。昨年度から今年度にかけて、動脈瘤壁の由来細胞に対して遺伝子導入の検討を行った。 アテロコラーゲン法による導入を試みた。アテロコラーゲンは細胞外マトリックスタンパク質であるコラーゲンを酸素可溶化したもので生体適合性が高いバイオマテリアルである。siRNAとアテロコラーゲンは複合体を形成し、ヌクレアーゼによる分解を回避し、安定した状態で存在し、効率よく細胞内へ導入できると言われている。瘤壁に対して適切な導入効率を得るため、種々の検討が必要であり、その条件の検討を行った。
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