研究課題/領域番号 |
24592053
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
鈴木 章司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (30235949)
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研究分担者 |
加賀 重亜喜 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (10422693)
松本 雅彦 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (30372501)
榊原 賢士 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (40419338)
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キーワード | 人工心肺潅流障害 / 小児用膜型人工肺 / 充填液アルカリ化 |
研究概要 |
今年度は、小児用人工肺、Xコーティング回路(6 mm径、1,5 m長)、pH測定器を組み込んだ、充填液量200 mlの再循環装置を用いた実験を継続して行った。前年度にpHセンサーを鋭敏でパソコンへの自動記録機能を有するHORIBA LAQUA-F71に変更して以来、測定値に鋸歯状の揺らぎを生ずる問題が発生していた。その原因究明のため、再循環装置のローラーポンプを遠心ポンプに交換して比較する実験を追加した。その結果、揺らぎはローラーポンプに特徴的な流れに起因することが明らかとなった。 次に、前年度は充填液の違い(人工腎臓用補液、重炭酸リンゲル、酢酸リンゲル、乳酸リンゲル)とガス吹送の影響を中心に検討したため、主たる部材である人工肺の違いについての検討を重点的に行うこととした。国内で入手可能な6種の人工肺(FX05 テルモ、NHPエクセランキッズ 泉工、OxiaIC JMS、ハイライト乳児用 メドス、BIOCUBE2000 ニプロ、ディデコKIDS D101 ソーリン)を用い、当院で使用中の人工腎臓用補液(サブパックBi)、室温25℃、再循環ポンプ速度1.0 l/分の設定で行った実験では、全ての人工肺で充填液の経時的なアルカリ化が認められた。再循環を40分間施行後の充填液の平均pH値は、7.51~7.85で、2つの人工肺においてpH 値は7.8を超えた。pH上昇が比較的顕著であった2つの人工肺は、血液の流入部・流出部が直線的となる構造であり、他はハウジング内部の熱交換器通過後、血液が内から外へ放射状に流れる構造であった。しかし、この構造上の特性とpH上昇の危険性については、まだ断定できるだけのデータはない。 これらの研究の中間結果を、第39回日本体外循環技術医学会(JASECT)、第44回日本心臓血管外科学会学術総会において報告し、致死的な人工心肺潅流障害の発生を減らすために情報発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
pHセンサー(HORIBA LAQUA-F71)の故障により長期中断を余儀なくされた。現在は修理が完了しており、実験の継続に支障はない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で人工肺の構造特性による充填液のアルカリ化への影響が示唆されているため、再現実験を繰り返す必要がある。尚、血液を使用した赤血球のechinocyte化による血液凝集誘発実験後には人工肺を廃棄処分せざるを得ないため、充填液と人工肺の組み合わせによる十分なデータを収集した後に、誘発実験を行って回路内圧の変化等のデータを収集する。最終的に、小児人工心肺プライミング操作における充填液のアルカリ化が人工心肺潅流障害をきたす危険性、特にその条件を明らかにし、全国での医療事故回避に役立つように情報発信していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
pH測定器(HORIBA LAQUA-F71)のセンサーの故障に伴い実験が中断したため、物品の補充のための支出が遅れたことによる。 研究を遂行するために、当初の実験計画に従って使用する予定である。
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