研究課題/領域番号 |
24592056
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
椎谷 紀彦 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00250449)
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キーワード | 運動誘発電位 / 虚血性脊髄障害 / 大動脈手術 |
研究概要 |
大動脈外科手術に伴う脊髄虚血障害を防止するため、経頭蓋脳刺激による筋電図である運動誘発電位motor evoked potential(MEP)のモニタリングが広く用いられているが、麻酔薬の影響や下肢虚血の影響を受け偽陽性率が高く、予後との相関も乏しい。より有 用性が高いモニタリング法に、脊髄直接刺激・導出による脊髄誘発電位evoked spinal cord potential(ESCP)があるが、硬膜外電極を要するため、ヘパリン使用環境での応用には難点がある上、電極の位置不良によりモニター出来ない場合がある。本研究は、食道電極を用いて脊髄を電気刺激することにより、硬膜外電極を用いずにESCPと同等の有用性を持つモニタリング法を確立することを目的として実施している。 当該年度においては、前年度に実現可能性を確認した方法(シリコン製エアウェイと硬膜外電極を用いて自作した食道電極と頸部皮下電極を用いたtrain of five刺激)を用い、安全性の確認と、麻酔薬等への安定性を確認した。 安全性としては、心臓のリズムに対する悪影響がないことを8匹の保存心電図波形から確認した。また麻酔薬過量により犠牲死させた3匹のイヌの摘出食道標本から、食道粘膜への影響がないことも確認した。さらに、生存させた5匹のイヌの神経機能に問題がないことを確認し、脊髄への悪影響がないことも確認した。 麻酔深度に対する安定性試験では、プロポフォルとアルフェンタニルの投与速度を様々に変更し、経頭蓋電気刺激と比較検討した。臨床例で見られる経頭蓋刺激の不安定性を実験では再現できなかったため、差を確認するにはいたらなかったが、経食道刺激の安定性は確認できた。さらに、経食道刺激は経頭蓋刺激とは異なり、電極の位置がアバウトでも導出が容易であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2年度の最大の目的であった、経食道脊髄刺激の麻酔薬への安定性試験を実施することが出来、ここまでの研究成果を今年度中に学会等で発表予定であるため。
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今後の研究の推進方策 |
脊髄虚血モデルにおける本法の有用性の証明実験へと進む予定である。また余裕があれば、低体温領域での経頭蓋刺激に対する優位性を検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品経費の端数が生じたため 4次年度持越しは45円であり、計画に変更はない
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