2013年度までに9匹のハイブリッドビーグルに対し、肺動脈基部外側から運針して肺動脈弁を肺動脈壁に縫着する方法により肺動脈弁逆流および右室拡大モデルの作成を行った。当初目標としていた一定期間の右室拡大後の肺動脈逆流制御は、各種方法を行ったが再現性を得られなかった。2014年度は観察実験を終了した肺動脈弁逆流・右室拡大モデルでの右室容量および心機能について評価するとともに、右室機能の不可逆性について、病理組織学的手法および生化学的アプローチによる右室心筋の不可逆性評価を行うこととした。 心臓超音波検査において、肺動脈逆流血流時間積分値は術直後 21.5±7.7cm、12週後 32.75±10.6cmと十分な肺動脈逆流を認め、術後12週での右室拡張末期容量は術前の1.75±0.58倍に拡大し、十分な右室拡大を得られた。一方、カテーテル検査においては有意な結果を得られなかった。病理組織学的検討としてはHE染色による心筋細胞径、Masson Trichrome染色による組織繊維化、TUNEL染色による心筋細胞アポトーシスにについてそれぞれ評価したが、線維化の程度、心筋線維径は術前後で有意差を認めず、明らかな不可逆性変化を確認できなかった。これら結果を元に本研究成果を第67回日本胸部外科学術集会にて発表した。肺動脈逆流を制御し、右室拡大の不可逆性を検討する目標は達せられなかったが、本モデルは臨床条件に近い実験・観察および組織学的評価ができ、慢性的な肺動脈逆流の病態解明に今後有用と考えられた。
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