研究課題/領域番号 |
24592061
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上野 高義 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (60437316)
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研究分担者 |
宮川 繁 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70544237)
井手 春樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90600122)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 再生医療 / 難治性疾患 |
研究概要 |
本研究では小児心不全に対する補助人工心臓、再生医療を用いた集学的治療の研究を目的とし小児心不全治療に適切な細胞シート移植法、新規治療薬の開発及び、小児心不全における補助人工心臓を用いたBridge to Recoveryの基礎的研究、臨床試験を行う予定である。まず小児におけるシート移植法の確立のため幼少DCMハムスターを用い筋芽細胞シート移植を実施。筋芽細胞シート移植群では有意に心機能の回復を認め心筋の線維化を抑制することが明らかとなった。また新規治療薬であるプロスタサイクリンアゴニストONO1301を培養血管内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞に投与し分泌されるサイトカイン量の定量を行った。血管新生効果、線維化抑制効果を示すVEGF、HGFの分泌が促進され幹細胞誘導を示唆するSDF-1などの分泌が促進された。ONO1301をアテロコラーゲンシートに含有させたシートをDCMハムスターへ移植、心機能改善効果と心筋線維化抑制効果を組織学的に検討した。シート移植群はコントロール群と比べ有意に42日間の生存率を改善させ超音波検査では心収縮能の改善と、左室拡張末期径の縮小を示し心機能改善効果を示した。組織学的には、シート移植群において有意に線維化の抑制と血管新生の促進を示した。In vitro実験でも示唆されたようにVEGF、HGFの分泌は亢進することが示された。幼若ブタから骨格筋を採取、筋芽細胞シートを作成し成熟ブタから作成した筋芽細胞シートと比較検討をした。構造タンパクであるDesminの配列や長寿遺伝子であるSirt1、Sirt7の発現が異なり分泌するHGF、VEGFサイトカインの量は有意に増大した。幼若細胞より作成した筋芽細胞シートの質の向上が示唆された。小児重症心筋症に対する臨床研究のプロトコルを作成し院内倫理委員会で承認、厚生労働省ヒト幹細胞臨床研究審査委員会での承認を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究計画では、小児心不全に対する再生医療の基礎を確立することを目的とした。幼若動物を対象とした基礎実験をもとに、小児に対する細胞治療の有効性と、実施可能性を示すことが可能となった。これまでに、当科において成人心不全患者に対する筋芽細胞シート治療を臨床研究、治験で行ってきた。その実績と、本研究で行った基礎的実験をもとに、小児心不全患者に対する筋芽細胞シート治療の臨床研究を立案することが可能となった。ヒト幹細胞臨床研究の枠組みでプロトコルを作成し、実際の患者に対する新規治療の開発として、安全性評価試験を行うこととした。院内倫理委員会での承認の後、厚生労働省ヒト幹細胞臨床研究審査委員会での承認を得、平成25年度初旬には、臨床研究を開始することとなった。また、小児心不全患者に対する補助人工心臓の装着が徐々に可能となっている。補助人工心臓装着前の心筋の組織学的検討はすでに開始しており、今後は、移植後や補助人工心臓離脱後の心筋組織の検討が可能となる。現時点での本研究進捗状況は、当初の研究計画と比較して進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、小児心不全患者に対する筋芽細胞シート移植の実施を計画している。主要評価項目としては、安全性の評価、実施可能性の評価であり、副次評価項目として、細胞シート移植による左室機能改善効果、患者のQOL評価を検討する。また、小児に対する補助人工心臓の装着が実施可能となりつつある。補助人工心臓装着前の心筋組織と、離脱又は移植による心臓摘出後の心筋組織との比較検討を行う。心不全患者に対する総合的治療体系の確立をめざし、上記細胞シート治療を中心とする再生医療の確立と補助人工心臓治療によるbridge to recoveryのメカニズムを解析する。補助人工心臓装着患者の線維化抑制のメカニズムの解析、心筋幹細胞とその集積の解析、血管形成に関与する細胞の解析、心筋再生因子の解析等を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、データ解析等に必要な実験試薬の購入に研究費を使用したいと考えている。また、研究成果を発表する学会への旅費にも研究費を使用する予定としている。
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