研究課題/領域番号 |
24592063
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東 純哉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (20614671)
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研究分担者 |
谷山 義明 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60372611)
眞田 文博 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30722227)
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キーワード | 腹部大動脈瘤 |
研究概要 |
当教室で作成したPNノックアウトマウス(PNKO)をApoEKOと交配してApoE-PN2ダブルノックアウトマウス(DKO)を作成し、Ang IIでAAA誘発を行ったところ、体血圧はApoEKOに比して有意差は認められなかったが、AAA形成率、破裂率が有意に低下した。このことから分子学的機序は明らかではないが、メカニカルストレス応答性タンパクであるPNが壁張力に依存した血管リモデリングに深く関与していることが示唆された。血管の圧感受性に関連する因子の候補の一つと考えられた。一方で喫煙によりAAAの発症リスクが7.6倍になることが知られているが、2012年にApoEKOにAngIIではなく、ニコチン単剤(1.5mg/kg/day)でもAAAが誘発できることが報告された(Nat Med. 2012 Jun;18(6):902-10)そこでApoEKOマウスおよびApoE-PN2/SV DKOにニコチン投与を行ったが、6週間の観察期間を通じて有意な血圧の上昇は認められなかった。腹部超音波装置による血管径の計測ではApoEKOマウス群において14日目より拡大傾向が認められた。またApoE-PN2 DKOマウス群でも14日目より拡大傾向が認められたが、ApoEKOマウス群と比較して21日目より有意に血管径拡大は抑制されていた(156.1±9.6 vs 113.9±4.0% at day 42, p<0.05)。6週目にAAA形成を剖検で確認したが、両群ともにAngII誘発AAAモデルで認められる特徴的な解離性動脈瘤用の血腫形成は認められなかった。ニコチンはAngIIとは異なる機序でAAAを誘発している可能性があるが、PNの中でもPN2を抑止することでいずれの刺激に対しても血管径の拡大、もしくはAAA破裂による死亡を抑止できることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の要になっているノックアウトマウスが想定よりも繁殖しにくいため。またエラスターゼAAAモデルで使用するブタエラスターゼを生産してる会社が製造方法を変えたため、力価が強くなりこれまでの成果との比較検討が困難になった。そのため、薬剤投与濃度の再検討から行っている。
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今後の研究の推進方策 |
生体におけるぺリオスチンのスプライシングバリアントの機能を解析するためにノックアウトマウスを用いたvivo研究は必須であるが、前述のように繁殖速度が想定よりも遅い。現在、ぺリオスチンのスプライシングバリアントの中和抗体の精製も進めているので十分な抗体量が得られるなら野生種に対する抗体の全身投与を行い、ぺリオスチン機能解析を進める。また、ニコチンとPNはAAA病態の進展に影響を持っていることが示唆されたため、さらに解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
ノックアウトマウスの繁殖が想定よりも遅れたため、その手術や術後の検体処理に要する費用が次年度に必要になった。 PN全長およびPN1ノックアウトマウスが繁殖すれば、それぞれのマウスに対してAngIIおよびニコチンを負荷して腹部動脈瘤を誘発してPNの更なる機能解析を行う。
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