研究課題/領域番号 |
24592064
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岡田 健次 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90284356)
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研究分担者 |
大北 裕 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40322193)
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キーワード | 大動脈瘤 / 薬物治療 |
研究概要 |
平成24年度は,ラット腹部大動脈瘤モデルを使用しその発生機序に酸化ストレスが大きく関与すること,さらに薬物治療による動脈瘤形成抑制が可能であるか実験的に検討した.瘤形成に酸化ストレスが大いに関与すること,エダラボンによる瘤形成抑制効果のみならず瘤形成後進展抑制効果といったより臨床的な知見をえることができJ Vasc Surg. 2012 Jun;55(6):1749-58に論文発表し,研究概要に示した研究1(瘤形成に酸化ストレスの関与,エダラボンの有用性)を終了した. 平成25年度には研究2(アスコルビン酸含漬徐放シートを用いた実験)に着手した.本研究では前年度に明らかにされた酸化ストレスの軽減が瘤形成抑制に有効であることに着眼した.抗酸化作用を有するアスコルビン酸を含漬させた徐放シートを瘤周囲に巻くことで瘤形成が抑制さるという仮説のもと,我々の作製したラット腹部大動脈瘤モデルを使用し,コントロール群(シートなし:C群),アスコルビン酸を含漬していない徐放シートを瘤周囲に巻く群(G群),アスコルビン酸を含漬した徐放シートを瘤周囲に巻く群(A群)の3群で比較検討した. その結果,A群で4,8週後の大動脈拡大は有意に抑制された.さらに酸化ストレスに関するDihydroethidium染色,8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)の抑制が確認された.A群ではエラスチン,コラーゲンが有意に保たれ,MMP-9,monocyte chemotactic protein-1, IL-1β,TNF-αの発現は抑制され,MMPに拮抗するTIMP-1, -2の発現は亢進していた.以上の結果からアスコルビン酸を含漬した徐放シートを瘤周囲に巻くことは抗酸化ストレス作用を介し瘤抑制に有効であるこが確認された.臨床的意義として,手術時に手術適応のない血管拡大部位に応用することで遠隔期の再手術が予防でき有効な治療戦略になりうることが期待された.以上の結果はJ Vasc Surgに投稿し受諾され,2014年5月3日現在掲載待ちである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画書に予定した研究内容(研究1,2)については当初の仮説はほぼ証明できた.研究1では酸化ストレスが腹部大動脈瘤に形成に関与することを証明し,研究2では研究1の成果に基づき,抗酸化作用を有するアスコルビン酸含漬徐放性シートが有効であることを証明し,臨床的意義もより明確となった.研究1,2に関して論文作製済みであり,さらに同様の機序を有する経口薬が瘤形成抑制効果を有するかを検討中である.以上の点から,当初の計画以上に進呈していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
我々の瘤拡大予防の最終目標は経口投与可能な薬物による治療であり,現在糖尿病治療薬であるDipeptidyl peptidase-4 (DPP-4)拮抗薬,リボフラビンに着眼し研究進行中である.特に前者は低血糖をきたすことなく瘤形成,拡大予防が期待できる.
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