遅延造影MRIによる心筋バイアビリティー評価に基づいて行った虚血性心筋症に対する左室形成術は、自覚症状、心機能ともに改善し、これまでに報告されている左室形成術後の生存率より改善している。しかしながら、依然として術後に心不全を再発する症例を認 めることから、拡張障害の関連が示唆されている。 本研究の目的としては、収縮能だけでなく拡張能についてもMRIにて心機能を測定することで、虚血性心筋症の予後関連因子を検討し更なるQOLの向上、治療戦略の確立を目指している。 MRI施行可能なEF 35%以下の虚血性心筋症患者を対象に、全例心臓MRIを施行。従来通り、遅延造影MRIの結果を基に心筋バイアビリティーを評価し、左室形成術の適応、切除範囲を決定した。術前、術後2週間、術後6ヶ月時に、MRIを用いて心機能を評価する。その際、拡張能の評価として最大充満速度 (PFR)、最大拡張到達時間 (TPF)を合わせて算出。術後経過中の自覚症状・心事故の有無を観察し、心機能、特に拡張能と心事故の発生の関係について検討した。その結果、MRIにて測定した最大充満速度 (PFR)、最大拡張到達時間 (TPF)と心事故の関係について、有意差を確認することはできなかったが、同時に評価した心エコーでは拡張能と心事故発生において有意差を認めている。これらの内容については、平成24年12月に行われた日本冠疾患学会にて報告し最優秀演題賞を受賞することが出来た。以上のことから、左室形成術と拡張能の関連は示唆されたため、さらなる症例の積み重ねを予定していたが、本年は調査対象となる症例がなく上積みができなかったので、以前に手術を施行した患者の現在の病状把握調査を行った。
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