研究課題/領域番号 |
24592073
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
渡邉 善則 東邦大学, 医学部, 教授 (90210963)
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研究分担者 |
佐々木 雄毅 東邦大学, 医学部, 助教 (40385729)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 人工血管感染 |
研究概要 |
人工血管感染は臨床に於いて極めて重篤な合併症であり、感染血管の治療が困難なのみでなく細菌の血管内への侵入により敗血症を引き起こす致死的な病態である。今までに各人工血管素材への細菌の付着という観点では研究がなされてきたが、細菌の人工血管内への通過性という観点で研究した報告はない。本研究は、各人工血管素材による外側から内側への細菌通過性の相違を検討することで、血流感染に対する人工血管の感染抵抗性を研究している。2012年度は2種類(エラストマーシールドダクロン、ゼラチンコーティングダクロン)の人工血管でVitroの人工血管感染モデルを作成し、外壁に細菌感染をおこし内壁に細菌が通過するまでの時間、菌量を検討した。また、電子顕微鏡で人工血管壁内に細菌の侵入を認め、Vitroモデルでの細菌の人工血管壁への通過を確認した。コントロールとして新品の人工血管も観察し、2種類の人工血管でそれぞれ特色があり、その特色と人工血管への細菌通過に関する実験結果を日本外科学会総会で発表した。さらに今までの研究結果より、エラストマーシールドダクロン人工血管は、電子顕微鏡所見でエラストマー層の厚さが不均一であることが判明した。通過性の低いエラストマー層にところどころ欠損を認め、これがエラストマーシールドダクロンにおける細菌感染に大きく関与していると思われた。そして人工血管の外側と内側においての差を、電子顕微鏡で観察し検討した結果、エラストマー層の厚さは均一ではなく、エラストマー層においてところどころに欠損を認めたものの、それらの数は人工血管1本の中において外側、内側で有意差がないことがわかった。今後はゼラチンコーティングダクロンの感染機序を検討し、セラチンの溶解時間や、細菌が産生するプロテアーゼ発現量の関与が考えられ実験で証明していく方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電子顕微鏡で観察し検討した結果、細菌の侵入を阻止できる可能性のあるエラストマー層の厚さが均一ではなかったが、この理由として人工血管に屈曲防止のためのクリンプ加工が影響している可能性が考えられた。本研究を科学的に実証するためには、エラストマーが細菌の侵入を阻止できる仮説を実証する必要があり、屈曲防止のためのクリンプ加工をする前の人工血管の入手が必要であった。ノンクリンプ人工血管(クリンプ加工をする前の人工血管)の入手に困難を極め、時間を要したが、平成25年度からの実験実施が可能となり、ゼラチンコーティングダクロン人工血管との感染機序の相違を科学的に実証する準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
実験に携わる人員を増員し、24年度に計画した実験を次年度実験計画に組み込みことが可能となるとともに、精度の高い安定した結果が得られることが期待でき、やや遅れている研究を推進し、研究の進展を計ることとした。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度はゼラチンコーティングダクロンの感染機序を検討し、ゼラチンの溶解時間や、細菌が産生するプロテアーゼ発現量を測定する計画である。24年度は【現在までの達成度】で述べたように、実験計画の遅れが生じ未使用額が発生した。入手が困難であったノンクリンプ人工血管(クリンプ加工をする前の人工血管)が入手可能となったため、次年度の研究費の使用は、遅れた実験を本年度の実験計画に組み込むための人工血管等の実験に関わる諸経費、および現在までの研究成果を報告するためや、人工血管感染に関わる最新の研究成果の情報収集のために、国内および国際学会への参加を計画している。
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