研究概要 |
我々はブタ基礎実験において人工心肺中の低頻度人工呼吸(Low Frequency Ventilation:LVF法)が著明に人工心肺後の肺障害を軽減することを報告した。本研究はLFV法を臨床応用し成人開心術における肺障害予防効果とその機序解明に取り組む目的で行っている。 昨年度本研究が倫理委員会で認められ、今年度まず我々が行うのは成人開心術におけるLFV法の有用性の研究である。肺障害が重篤に見られる手術群(人工心肺約4時間の大動脈弓部置換術)と肺障害が軽度の手術群(同2時間以内の大動脈弁置換手術)に分けて研究する。評価項目はa)臨床経過(人工呼吸時間、ICU滞在時間), b)動脈血液ガス所見の変化, c)胸部X-p (無気肺、肺水腫他), d)スワンガンツカテーテルによる肺動脈圧・肺血管抵抗の術中・術後変化, e)肺動・静脈血中白血球数、乳酸値, f) 気管支粘液中のinterleukin(IL)-6, basic FGF, 補体価(C3, C4)である。 本年度は23人の患者から本研究参加への同意が得られ、19人の患者からデータを採取することができた。現在検体から各検査項目の測定とデータ解析を進行中である。上記の如く本研究は人工心肺1-2時間の軽症群と3-4時間以上の重症群に分けて研究するが、今のところ重症群は2例のみであるため、来年度は重症例を中心にデータ収集を図る予定である。 軽症群のデータ解析では、全ての症例で大きなeventや合併症なく経過し順調に人工呼吸器から離脱したが、一方で人工心肺後肺機能(血液ガス所見)は悪化し、肺動脈圧及び肺血管抵抗は上昇、気管支粘液中のC3, C4, IL-6は有意に上昇した。LFV群と非LFV群での比較は現在行っているところである。
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