研究課題/領域番号 |
24592079
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
北田 正博 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (60332483)
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研究分担者 |
笹嶋 唯博 旭川医科大学, 医学部, その他 (20109515)
大崎 能伸 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30191935)
林 諭史 旭川医科大学, 医学部, 助教 (10463754)
松田 佳也 旭川医科大学, 医学部, 助教 (50598456)
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キーワード | がん診断 / リンパ節転移 / 胸膜播種 / 蛍光内視鏡 / 自家蛍光 / アミノレブリン酸 |
研究概要 |
【目的】肺癌術後胸腔内再発の一因と考えられる微小播腫性病変や早期の悪性胸膜中皮腫に対する診断として、CT、MRI、PET等の画像診断や手術時の目視には限界があり、自家蛍光に着目した、新たな光学的診断法の研究を行っている。【方法】正常組織では、400~450nm程度の青色励起光に反応して、520nm程度の緑色の自家蛍光が観察されるが、癌病変部位では、粘膜上皮の肥厚、自家蛍光物質の減少、蛍光吸収物質の増加などにより、緑色の自家蛍光が減弱する事により、蛍光色調の変化を観察、悪性病変の局在診断を行った。H25年度は、呼吸器外科手術症例に対し、胸腔鏡を使用した観察研究を行った。【結果】胸膜悪性腫瘍、肺癌のpl2(pl:腫瘍の胸膜浸潤度 pl0:浸潤なし、pl1:胸膜への浸潤は認めるが胸膜表面は超えていない、pl2:胸膜面を超えて浸潤している)以上の胸膜浸潤例、転移性肺腫瘍の胸膜露出例では赤紫調の病変局在診断が可能であった。観察病変の大きさも5mm台までは容易に観察可能であった。しかし、pl0症例での診断は困難であり、pl1症例でも約75%程度の診断率であった。【改良点と今後の方針】pl1症例の診断度がやや低いのは、画像の不鮮明も考えられ、従来のキセノン光源(300W)からLED光源を開発し、使用開始した。その結果、光量の増加と420nm程度の安定した励起光を発する事が可能となり、やや診断率は向上した。しかし、更なる精度向上のために、色調の変化を光学的に高める目的で光増感剤(アミノレブリン酸:5ALA)に注目した。アミノレブリン酸の代謝物質は、プロトポルフイリンであり、悪性腫瘍に蓄積する。そのプロトポルフイリンによる発光(630nm程度)と正常組織における自家蛍光との色調の差を利用した光学的診断を開始している(旭川医科大学倫理委員会承認済)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胸部悪性腫瘍に関する、自家蛍光観察システムを使用した光学的診断に関しては、その適応と程度に関し、ある程度の見解が得られた。画像の不鮮明さに対して、LED光源を使用開始し、ある程度の解決が得られた。しかし、微小病変などの診断を確立させるためには、更なる精度向上が必要であり、今後の研究の必要性が示唆された。(以下に記載) リンパ節診断に関しては、微小転移など困難な例もあり、胸膜悪性病変を中心とした自家蛍光による光学的診断法に比べやや進んでいないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
自家蛍光観察システムを利用して、更なる精度向上を目指す。我々は、光感受性物質である5ALA(アミノレブリン酸)に注目した。経口で摂取した5ALAは、プロトポルフイリンに代謝され悪性細胞内に留まるため、630nm程度の赤色~ピンク色の発光作用を呈する。現在、脳腫瘍等の脳神経外科領域、膀胱癌、前立腺癌等の泌尿器科領域でその研究がなされているが、自家蛍光との対比を応用した診断法の報告はなく、現在研究を開始している。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用する5ALAは1g→2万円で購入している。臨床研究であり補償保険も入れて1名あたり約2.5万円の経費を必要とする。現在まで約20名の呼吸器外科手術例に本研究を施行したが、本診断法の有用性を確立させるためには更に50名程度の解析を必要とする。 5ALAの費用は,今後25000×50=1250000円の経費が必要となる。加えて硬性鏡用のドレープ 4000×50=200000円の費用が必要となる。更に、学会発表(10万円×3回)、英文雑誌投稿費用(10万×2編)合わせ、約1950000円の使用を計画している。
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