研究実績の概要 |
[方針] ①DNA損傷応答(DDR)関連分子(Chk2, BRCA1, ATM等)の肺腺癌における発現異常、機能異常の有無を検討し、染色体不安性の関係を調べる。②非小細胞肺癌におけるCINと臨床肺癌におけるdriver遺伝子変異との関係を明らかにし、発癌・増殖における役割を解明する。 [方法]①非小細胞肺癌切除検体におけるChk2, BRCA1等のmRNA発現をqRT-PCRで解析する。DNAサンプルを用いて染色体不安定性をSNP arrayにて評価し、他因子との関連を検討する。②肺腺癌症例においてaneuploidyをレーザスキャンニングサイトメーター(LSC)法にて検討し、遺伝子変異との関係を検討する。 [結果]①腺癌症例66例においてBRCA1、Chk2遺伝子発現をRT-PCRにて解析した。リン酸化Chk2およびBRCA1の免疫染色を行った。SNP array CGHに20サンプルを提出: 構造変化の多いサンプル(%def>16%: n=8)をCIN+ 、少ないサンプル(%def<16%: n=12)をCIN-としたところ、CIN+のものはChk2発現レベルが高かった。Chk2遺伝子発現レベルの高い腺癌患者では、発現レベルの低い患者に比べて、無再発生存が有意に不良であった。②レーザスキャンニングサイトメーター(LSC)法にて解析済みの症例(157例:1998年1/19~2001年8/30に手術)において、EGFR遺伝子変異をPNA-LNA PCR clamp法にて検討、またEML4-ALK変異を免疫染色法(iAEP法:intercalated antibody-enhanced polymer)で検討した。その結果、aneuploidyと腺癌のdriver遺伝子変異との明らかな関係は認めなかった。以前の解析において非小細胞肺癌におけるaneuploidyを有する肺癌症例は予後不良であることを示したが、今回の検討により、特に腺癌および女性においてaneuploidyを有する肺癌症例の予後が不良であることが示唆された。
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