研究課題
本研究において、臨床研究面では、2002年1月から2012年12月までに北里大学病院で外科的に切除された原発性肺癌のreviewを行った。当該期間に根治切除された原発性肺腺癌症例は629例であった。その中でmicropapillary patternを有するadenocarcinoma (以下:MPA)は、101例(16.1%)であり、通常のadenocarcinoma (conventional adenocarcinoma (以下:CAC))は528例(83.9%)であった。MPA群とCAC群で臨床病理学的因子の解析を行い、年齢、腫瘍径、胸膜浸潤、静脈浸潤、リンパ管浸潤、リンパ節転移、術後病理病期で有意差を認めた。基礎研究においては、外科的に摘出されたMPAならびにCAC症例の凍結組織標本からタンパクを抽出し、両者のタンパク発現プロファイリングを二次元電気泳動にて解析した。その結果、発現に差のあるタンパクとして複数のタンパクが同定され、それらのタンパクのうち、上皮間葉転換や腫瘍の悪性度と関連の深いvimentinに着目した。Vimentinの免疫組織化学染色をMPAおよびCACに対して行い、その発現と臨床病理学的因子との関連を検索したところ、CACではvimentinの発現と腫瘍の分化度に相関を認めた。一方MPAにおいては、リンパ管浸潤およびリンパ節転移陽性の症例で有意にvimentinの高発現を認めた(p<0.05)。また、MPA群において、vimentin高発現群と低発現群での群間比較を行うと、両群間の予後に有意差を認め(p<0.05)、多変量解析においてもvimentinの高発現が独立した予後因子であった。以上より、MPAにおけるvimentinの発現は、肺腺癌患者の予後の予測因子となり、有用なbiomarkerとなる得る可能性が示された。
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