研究課題/領域番号 |
24592105
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
石角 太一郎 日本医科大学, 医学部, 助教 (60424488)
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研究分担者 |
臼田 実男 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60338803)
池田 徳彦 東京医科大学, 医学部, 教授 (70246205)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中枢型肺癌 / 凍結融解療法 / 気管支鏡 |
研究概要 |
本研究は中枢型肺がんに対する凍結融解療法を用いた新規内視鏡治療法の開発が目的である。初年度はその基礎実験として、まずクラウン系ミニブタの気管と気管支を対象に、全身麻酔下にて接触式プローブを用いて凍結融解療法を施行した。治療後に取り出した検体を病理学的に検証し、気管、気管支壁の損傷程度を評価して安全性の確認を行った。また、解剖学的問題で治療困難な部位が存在するかを確認し、プローブの接触方法について検討を行った。 実験はプローブ先端部を-65℃、-85℃まで冷却し、ブタの気管側壁、気管膜様部、主気管支壁、葉気管支壁に対して治療を行った。凍結部位を病理学的に検討したところいずれの温度でも気管支粘膜上皮および粘膜下層の壊死が認められたが、気管軟骨、気管支軟骨部の構造は保たれていた。また5分以上長時間治療を行っても軟骨部への傷害は認めなかった。気管支筋層は壊死、断裂が認められ、筋層への凍結治療効果が示唆された。部位別には気管側壁、膜様部、気管支分岐部いずれも治療可能で凍結困難な部位は認めなかったが、末梢気管支の接線方向の側壁は一部プローブ接触が困難で、凍結壊死効果も不十分であった。 以上の結果より、in vivoでの大型動物の気管、気管支上皮に対する凍結融解療法の効果と安全性が病理学的に確認できた。また中枢気道壁への治療効果はプローブの接触角度に影響を受けないことが示唆され、次年度以降のプローブ開発に有用な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で平成26年度に予定していた大型動物実験を先行し、初年度は気管、気管支に対する凍結融解療法の安全性を病理学的に確認した。また、中枢気道の側壁や膜様部はおおよそ治療可能であること、治療効果がプローブの接触角度に依存しないことを確認でき、これらの成果は次年度以降の研究計画を立てる上で有用な結果が得られた。その一方で、当初24年度に計画していたLewis lung carcinoma (LLC) 細胞担がんマウスに対する抗腫瘍効果および至適条件の決定は次年度以降に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降はまずin vivoでのLewis lung carcinoma (LLC) 細胞を用いた凍結融解療法の抗腫瘍効果を病理学的に検証し、現行の治療法である光線力学的治療法(Photodynamic therapy: PDT)と比較検討を行う。また、従来のプローブ接触式と液体窒素を噴霧するスプレー式との抗腫瘍効果の比較検討を行った上で、より高い抗腫瘍効果が得られるように各方式の至適条件を決定する予定である。さらに気管支鏡の鉗子口を介して最も効果的に凍結融解療法を行いうる内視鏡専用スプレー式プローブモデルを開発、作製し、その有効性と安全性を検証していく方針である。最終年度にはFisher 344ラットを用いた悪性胸膜中皮腫モデルを作成し、中皮腫に対する抗腫瘍効果の評価を行い胸膜病変への応用の可能性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
肺がんに対する凍結融解法の抗腫瘍メカニズムを病理学的に解明するため担がんマウスの作製にC57BL/6マウスを用いる。作製した担がんマウスの腫瘍に対してFreezor + Cryoconsoleを用いてプローブ接触式凍結融解法を施行し、腫瘍径を計測しながら約6週間にわたり観察を行う予定である。同時に、観察群とは別に治療直後と治療後1週間の腫瘍検体を摘出し、凍結凝固の影響と抗腫瘍効果を病理学的に検証する予定であり、次年度ではこれらの実験に必要なC57BL/6マウスと消耗品を購入する。さらに、現行の治療法であるPDTと凍結融解療法における抗腫瘍効果の比較検討を行うため、光感受性物質等の薬剤も購入する。上記の実験に必要な消耗品費は次年度の支払請求書で記載した支出額に収まる予定である。また、これまでの実験結果を国内はじめ海外の国際学会で発表、報告する予定である。
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