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2013 年度 実施状況報告書

急性期脳虚血に対する経脳室および経動脈冷却灌流による複合的局所脳低温療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24592110
研究機関北海道大学

研究代表者

鐙谷 武雄  北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (80270726)

研究分担者 中山 若樹  北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40421961)
寳金 清博  北海道大学, 大学病院, 教授 (90229146)
キーワード脳梗塞 / 虚血再灌流 / 低脳温治療
研究概要

雄SD rat(250-310g)で中大脳動脈閉塞(2時間虚血)を行い、再開通後内頚動脈より選択的に冷却生理食塩液(10℃、6ml/kg、15min)を潅流する群(cold saline群)、37℃の生理食塩液を同様に潅流する群(warm saline群)、再開通のみの群(control群)の3群を作成し、cold saline群と他の2群を比較することで経動脈的局所低脳温治療の脳保護効果について検討した。
結果として、(1)脳温低下効果については、cold saline群では脳温の2-3℃の速やかな低下を認め、投与終了後も脳温の有意な低下効果(p<0.05)は10-20分間持続した。(2)神経症状については、24時間後の時点でcold saline群において有意に軽かった(p<0.01)。(3)脳梗塞体積(健側比%)、脳浮腫体積(健側比%)については、control群:42.5%、28.7%、warm saline群:36.4%、26.8%、cold saline群:13.7%、11.1%とcold saline群で有意に縮小した(p<0.05)。(4)血液脳関門(BBB)の破綻については、Evans Blueの脳内浸潤量による定量的評価において、他の2群と比べてcold saline群でEvans Blueの脳内浸潤量の有意な減少を認めた。(5)炎症関連分子の発現調節については、患側半球脳のホモジナイズを用いたWestern blottingにてcontrol群とwarm saline群でICAM1、MPO、MMP-9の発現亢進があったが、cold saline群ではこれらが有意に抑えられており (p<0.05)、免疫組織染色でもcold saline群で虚血辺縁部においてICAM1、MPO、MMP-9、Iba1の発現増強の抑制を認めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今回設定したcold salineの投与法(10℃、6ml/kg、15min)は、脳梗塞の大きさを1/3程度まで縮小させ、過去に報告されているその他の脳保護治療と比較しても遜色のない結果と言えた。この結果よりcold salineの投与条件としては、この方法を継続することで良いと考えられ、この条件の下で脳保護効果のメカニズムの検討を進めていくこととした。脳保護効果のメカニズムの解析として、炎症関連分子の発現調節の検討では、ICAM1、MPO、MMP-9の発現の有意な抑制を認め、最終的にはこれらの発現抑制がBBBの破綻を抑えて、虚血再灌流傷害を抑えているものと考えられた。これらの結果をまとめて複数回の学会発表を行い、本治療法の脳保護効果の高いことに反響を得ている。

今後の研究の推進方策

今回の検討で24時間の時点で、炎症細胞の動員・活性化とそれに伴うBBB破綻が局所低脳温で軽減することが明らかとなった。しかし、脳温の低下している時間帯は高々1時間であり、その間に生じている変化が最終的に炎症反応を抑えているものと考えられる。これらの反応のイニシエーターが何なのかは未だ分かっていないが、内皮細胞障害である可能性が高い。近年、虚血再灌流の初期の数時間において微小血管においてアストロサイトの終足の膨化により内皮が圧迫閉塞されることが明らかになっている。この変化が内皮細胞障害を引き起こし、ICAM1の発現亢進につながっている可能性がある。初期の数時間に生じる内皮細胞におけるこの形態的な変化が局所低脳温で抑えられているか、今後、電子顕微鏡を用いて検討する予定である。
もう一つのアプローチである経脳室的冷却法については脳室穿刺用の器具を購入して、方法の確立を図った。しかし、ラットの脳室の容積が小さいため、穿刺できても十分な量の灌流液を注入できないでいる。今後、方法の工夫を行う予定であるが、ラットで困難な場合はより大型の動物を使用する実験計画の見直しが必要となるかもしれない。

次年度の研究費の使用計画

平成26年3月納品分が、平成26年4月支払となるため。
研究の実験器具、試薬購入に使用予定。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] Trans-arterial regional hypothermia therapy protects ischemic reperfusion injury through the supression of endothelial cell damage.2014

    • 著者名/発表者名
      Kota Kurisu
    • 学会等名
      82nd AANS Annual Scientific Meeting
    • 発表場所
      Moscone Center(San Francisco, USA)
    • 年月日
      20140405-20140409
  • [学会発表] ラット虚血再灌流障害モデルに対する経動脈的局所低脳温治療の有効性の検討2014

    • 著者名/発表者名
      栗栖宏多
    • 学会等名
      第39回日本脳卒中学会総会
    • 発表場所
      大阪国際会議場(大阪市)
    • 年月日
      20140313-20140315
  • [学会発表] Focal hypothermia induced by post-ischemic intra-arterial infusion has a neuroprotective effect on cerebral ischemia reperfusion injury.2014

    • 著者名/発表者名
      Kota Kurisu
    • 学会等名
      International Stroke Conference 2014
    • 発表場所
      Convention Center(San Diego, USA)
    • 年月日
      20140212-20140214
  • [学会発表] Ratにおける虚血再灌流障害に対する局所低脳温治療の有効性の検討2013

    • 著者名/発表者名
      栗栖宏多
    • 学会等名
      第25回日本脳循環代謝学会総会
    • 発表場所
      京王プラザホテル札幌(札幌市)
    • 年月日
      20131101-20131102

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公開日: 2015-05-28  

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