今回の研究では、超高磁場MRIを用いることにより、放射性同位元素・造影剤を使用しない脳循環代謝評価を行い、脳卒中発症危険因子予測、術後評価、転帰予測に寄与することを目的とした。 3年目の平成26年度は実際の症例を中心に、これまでの経過観察を進めた。また、MRIと他の診断装置との測定値の誤差を検討した。そのことによりMRI臨床応用の有用性、限界点を確認した。臨床面での実際の撮像法としては、MRIはスピンラベリング法を用いて行った。同一症例において、SPECTでは動脈血および静脈血を採取することによる、定量CBFを測定した。MRI装置は超高磁場MRI研究施設の3.0Tesla MRI装置を使用した。脳血管性障害を有する症例においての検討においては、ROI法による各部位毎の定量値を測定し、相関を検討した。またMRSによる脳温および代謝産物測定も施行した。MRIで測定した脳血流量、脳温とSPECTで測定した脳血流量、脳循環予備能を比較検討した。使用コイルは昨年度より頭部用コイルを使用している。SPECTによるCBF定量測定に関しては動脈血と静脈血の間で良好な相関が得られ、スクリーニングとしては静脈採血による定量CBF計測が可能となった。これは本研究により初めて明らかになったものであり、英文誌にすでに掲載された。手術症例において施行したMRS温度測定による脳代謝評価に関しては、術前脳循環予備能との良好な相関が得られた。本知見も海外英文誌に掲載された。 3年目の総括としては、これまでの技術的な困難を克服した上での非侵襲的脳循環代謝測定が臨床応用可能であることが示されたと考える。
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