研究概要 |
平成24年度にはまず数学モデルを確立した。脳動脈瘤の自然歴に関するマルコフモデル作成し、複雑に絡み合う様々な要素を疫学データに合致させるよう試みた。モデル作成の上での、キーイベントは動脈瘤の発生・増大・破裂をどのように仮定していくかということにある。動脈瘤の自然歴モデルとしては、瘤の増大や破裂を瘤の容積(直径の3乗)と仮定すると現実に近いモデルが作成可能であった。そのうえでいくつかの仮定値をモデルに投入すると、動脈瘤保有率は50才で2.1%、60才で2.8%、70才で3.5%、クモ膜下出血発症率は10万人あたり1年間10.1人と疫学データに極めて近似していた。サイズ別の動脈瘤破裂率は直径5mm, 7mm, 10mm, 13mm, 15mmの動脈瘤でそれぞれ0.3%, 0.7%, 2.0%, 4.4%, 6.8%であった。その上で、各患者の動脈瘤の深刻度をQuality-adjusted life year (QALY) lossとして算出した。一例として60才の患者では、直径10mmの動脈瘤によるQALY lossは約10%という計算で深刻であるが、5mmの動脈瘤を有していてもそのためのQALY lossは数%以下であることが判明した。一方の患者自身の主観的深刻度の評価のための計画も進めている。これらの検査は、外来通院中の未破裂脳動脈瘤患者を対象にアンケートの形で行う予定である。学内の倫理委員会の承認を既に得て調査を開始している。
|