研究課題/領域番号 |
24592115
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田中 洋次 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (80323682)
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研究分担者 |
成相 直 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (00228090)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | arterial spin labeling / MRI / water permeability / blood brain barrier / cerebral ischemia / transit time |
研究概要 |
平成24年度は主に臨床用MRI装置を用いて、虚血性脳血管障害患者に対してArterial Spin Labeling(ASL)法、Dynamic susceptibility(DSC)法 MRI撮影とポジトロンCT(PET)撮影、またはシングルフォトンエミッションCT(SPECT)撮影を行い、ASLーMRI脳循環計測法の定量性について評価を行った。 その結果ASL法における脳血流測定は、正常循環において妥当な定量性を有することがわかった。一方で脳梗塞や脳動脈狭窄症などで脳血流の低下が見られる領域においては、循環時間の遅延が定量性に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。この影響は一般的な動脈硬化性の虚血性脳血管患者より、もやもや病患者において高度であった。DSC法で循環時間を計測すると、もやもや病患者においてより循環時間が遅延していることから、ASL定量性への循環遅延の影響はその程度に依存する傾向を有することが明らかとなった。またASL撮影のパラメータ(post-labeling delay, PLD)を調整することで、循環遅延の影響を減じることが可能であった。 虚血性脳血管障害患者で水の透過性が変化している患者の多くは同時に脳血流低下、循環遅延を伴っていると考えられる。すなわちこれらの患者に対してASL-MRI脳循環計測法を確立するためには、水の透過性を考慮するとともに循環時間についての補正も行わなければならないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではASL撮影の定量性を向上させて臨床に役立てることが目的である。平成24年度はまず現在のASL撮影における問題点を検証した。その結果、脳循環の遅延がASL撮影の定量性に大きく影響を及ぼすことが判明した、これにより、ASL撮影の定量性を向上させるためには水透過性変化と循環時間変化をいずれも考慮する必要があると考えられた。今年度は本研究における目標を明確とすることができたと考えられ、今後の研究をより論理的、計画的に進めるための重要な情報を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は動物実験および臨床計測を重ねる予定である。 動物実験では脳梗塞後再灌流モデルを用いてASL撮影とポジトロンCT(PET)撮影を行う予定であるが、その際循環時間の変化と水透過性変化を同時に計測する。それぞれの因子がASL撮影の定量性に与える影響を検証し、水透過性と循環時間を考慮したASL撮影の定量方法を確立する。 臨床計測は通常の日常診療において、脳血管障害患者、脳腫瘍患者などでCBF計測が必要な患者に対してASL撮影、PET撮影などを行いデータを蓄積しており、今後も継続する。動物実験により定量法を確立したあと、これら蓄積された臨床データから改めてASL撮影の定量計算を行う。その後PETなど他のモダリティのデータと比較して、本研究で確立した計測法の妥当性を検証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は動物実験、および臨床計測を継続するための費用が必要となる。すなわち動物実験では実験動物購入費用、実験用の器具、試薬の購入代金が必要となっる。また計測したデータの解析および保存のためワークステーション、ソフトウェア、記憶媒体が必要となる。 そのほかに積極的な学会発表と論文発表を行う。
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