研究課題/領域番号 |
24592116
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大石 誠 新潟大学, 脳研究所, 非常勤講師 (00422593)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | てんかん原性 / 神経ネットワーク / 細胞電位 |
研究概要 |
本研究は,今までにない切り口で,脳組織の「てんかん原性」の発現・獲得過程の段階を明らかにすることを目的に掲げている.方法としては,てんかんや脳腫瘍手術摘出後の大脳組織標本を生存状態のまま活用し,新しい蛍光イメージング法にて組織の生理学的反応を観察した結果と,免疫組織学的検索や病理組織所見の整合性から,てんかん原性を獲得してゆく組織に固有の変化を導きだそうとるるものである. 本年の研究では,脳神経外科手術で得られた標本組織に対し,当施設ですでに確立した処理・実験方法で,電気刺激に対するフラビン蛍光反応観察を安定して行い,信頼性の高い数々のデータを取得・蓄積した.実験後の標本に関しては免疫・組織学的検索も行っており,得られたデータのファイリングを行った.当初,2年分のデータが蓄積された時点で行うとした各組織標本のてんかん原性としてのクラス分類(「非てんかん性」から「高度てんかん性」などといったもの(詳細は未定))が今後可能かどうか,データを整理しているところである.具体的には,各種てんかん患者や脳腫瘍患者の摘出標本のスライス上で,電気刺激によるフラビン蛍光イメージングでの観察結果,抑制系神経細胞を標的とした免疫組織染色所見,および通常の病理組織診断の相関性を考案しており,その整合性とてんかんとしての重症組織固有の変化を検討している. 当初に掲げた研究テーマと研究計画としては,まずまずの進捗状況であると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初掲げていた実験結果の収集に関しては順調な範囲で進んでいる者と考えています.フラビン蛍光反応に関しては,てんかん発症歴が浅く,その頻度も1-2回の症例でも明らかな反応の亢進があるというデータが得られており,てんかん発作の既往が1回もない症例との差が歴然としていることが分かり,また免疫染色による抑制系の脱落も平行して進んでおり,当初想定していたよりも明らかな傾向が捉えられており,今後の研究成果が期待されます. まだ目的としていたステージングが可能な状況ではなく,現存の組織結果の検討を進め,また追加データの収集も進めなくてはなりませんので,まだ完全ではありませんが,おおむねは予定通りの進捗状況と判断します.
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今後の研究の推進方策 |
今までのペースにてデータを整理・解析して行きます.てんかん原性の発現から獲得にいたる大脳組織の変化に関する考察を行うことを目的としています. 具体的には,実験組織を臨床所見から,非てんかん性組織,またてんかんの程度による各種てんかん性組織に分類し,術中脳波の異常所見の有無,てんかんの病歴や難治性などを反映したクラス分類に当てはめてゆく.これら分類ごとにフラビン蛍光反応結果,免疫組織学的結果,病理学的な変化を合わせ,統計学的な相関・逆相関を導き出す.最終的には脳組織のてんかん原性発現・獲得に至る「ステージ分類」の提案に行き着けるように解析を進めたい. 追加して,新たな実験系の設定を行います.「てんかん原性」の研究テーマにおける,次のステップの実験系の確立へ向けた準備期間ともなるので,今までの実験結果を踏まえて,その方法を修正したり,結果次第で次の新たなステップへ進むための考案を行って行きたいと考えています.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究内容としての基本的な大きな実験器具に関しては既存のもので十分であり,今後は本研究のデータ解析に単独に必要なPCとソフトウェアの設備は行いたい. 実験においてのやや高額な消耗品としては,免疫組織診断用の試薬,蛍光イメージング用の消耗品一式(カメラ用のフィルタや,蛍光ランプなど)などがあがる. その他,学会参会費や,論文校正費の最低限のものは,予算に見込んでいる.
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