Mitochondriaは、細胞死の中心的な役割を担い、虚血性神経細胞障害においても、長年その役割が研究されてきた。近年、このmitochondriaは細胞の中で融合と分裂を繰り返しながら、形態をダイナミックに変化させている (mitochondria biogenesis)ことが明らかとなっている。この動態変化は、細胞の外因性刺激に対するエネルギー産生状態を意味するのみならず、細胞障害や細胞死にも密接に関与することが示され、様々な病態での役割が注目されるようになってきている。しかしながら、脳虚血病態では十分には解明されておらず、本研究ではその役割を検討した。 Mitochondria biogenesisには、GTP加水分解酵素であるMitofusion 1(MFN1)/MFN2、Dynamin-related protein 1、Optic atrophy 1(OPA1)などの多数の蛋白質が関わっているが、これらのうち、OPA1は、mitochondria膜間腔に存在し、mitochondria融合と内膜クリステ構造形成に関与することが知られている。また、アポトーシスに際し、OPA1はmitochondriaから放出され、これは内膜クリステ構造変化を介したcytochrome cの放出を促し、mitochondriaの分裂を惹起することが近年報告されている。本研究でのマウス前脳虚血モデルを用いた検討により、OPA1は脳虚血後にmitochondriaより細胞質へ放出されることが明らかとなり、このことが虚血性神経細胞傷害でも重要な役割を担うことが示唆された。
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