研究課題/領域番号 |
24592121
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡本 奨 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (10378036)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | もやもや病 |
研究概要 |
すでに論文報告している有力なバイオマーカー候補に対して小児例と成人例で患者群を分け実臨床情報との比較を行った。 方法:2009年1月から2012年7月にかけて、脳血管撮影により確定診断した21症例の連続したもやもや病、類もやもや病、片側もやもや病対照群の17症例から髄液を採取した。すべての髄液サンプルはSELDI-TOF-MSにより測定をおこなった。もやもや病群は19歳以下と20歳以上の2群に分け、それぞれ年齢をマッチさせたコントロール群と比較した。追加的な臨床データとして、①術前後の主幹動脈の狭窄閉塞性変化と②血管新生の評価をそれぞれもやもや病グレーディングスコアとMRA TOF画像を用いた方法で点数化した。それぞれの変数についてバイオマーカー候補のペプチドとの相関関係をピアソンの相関係数の検定、スピアマン順位相関係数検定によって調べた。 結果:pH5 pH7バッファー条件下において4473Daのペプチドが小児もやもや病、成人もやもや病両方においてで有意差が見られ、小児もやもや病の患者においてより高いピークを示した。4473Daペプチドのピークは年齢依存的な直線的減少を示し、4473Daペプチド-年齢のプロットと術前後のMRA scoreの差-年齢、angiogenesis score-年齢のプロットがそれぞれ高い相関関係が示された。(P=0.0008, P=0.001 R=0.68) 結論:もやもや病の髄液検体を使用したSELDI-TOF-MSを用いたプロテオミクス解析において4473Daのペプチドはもやもや病、とりわけ小児群において優位差を持って高いピークを示し、診断バイオマーカーとして用いた場合、高い感度、特異度を示した。4473Daペプチドの分布は術後の血管新生や血管の狭窄性変化との高い相関関係が示されこの物質が有効なバイオマーカー候補であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
もやもや病の髄液検体を利用して質量分析器を用いたプロテオミクス解析により、34個のもやもや病におけるバイオマーカー候補のうち最も感度、特異度の高い候補に対して実臨床のデーターを照らし合わせ病態との相関関係を明らかにした。上記結果はBMCに論文投稿中である。 この4473Daは有用なバイオマーカー候補であり、それが術後の血管新生や主幹動脈の狭窄性変化と関連している可能性が示唆されたため、今後の研究でLCMSやTriple-TOFなどの新しいテクノロジーを利用してそのアミノ酸配列を同定し、さらにはiTRAQやELISAなどの方法で定量したい。
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今後の研究の推進方策 |
バイオマーカー候補のタンパク質の精製、同定が遅延しているが、髄液中のごく微量のタンパクのため困難な作業となっている。今後は1.髄液の固相抽出 2.有機溶媒耐性のゲルろ過高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて当該分子の溶出される付近(3-7kDa)の分画を回収する。3.凍結乾燥し、再び適切なpHのバッファーに溶解する。4.陰イオン系樹脂を通過させ、結合物を回収する。5.スモールスケールで脱塩操作を行う。6.Nano HPLCをオンライン接続したOrbiTrapタンデム質量分析計(Thermo Fisher Scientific K.K., Yokohama, Japan) で同定する。この方法で成果を上げたい。 さらにBiomarkerの候補であるタンパク質の精製・同定を行った後、その抗体を用いてもやもや病剖検例より得られた病変部(内頚動脈終末部)における免疫染色を実施しそのタンパク質の発現の有無(過剰もしくは低下)を検討する。いづれかの変化を認めた場合には同定されたタンパク質がもやもや病の病因と関連する可能性が示唆されるため、さらにアミノ酸配列よりDNA配列を同定する。その結果に基づき動物モデルの作成を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
HPLCシステム 小計808000円 LCMSシステム 小計53500円 In vivo タンパク機能解析(CAM法 DAS法)小計46300円を要する予定である。
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