研究課題
名古屋大学医学部倫理委員会の承認の下、もやもや病患者や類もやもや病患者群及びコントロール群患者(もやもや病、類もやもや病以外の脳脊髄疾患患者)より髄液検体を採取し、適切な前処置を施した後に強力なイオン交換能を備えた官能基を持つProteinChip(Bio-Rad laboratories, Hercules, CA), Q10 /CM 10 arrayにアプライし、レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計 (ProteinChip System 4000 SELDI-TOF mass spectrometer, Enterprise version; Bio-Rad Laboratories)にて選択的に捕捉された微量のタンパク質を解析し、質量4kDaである2つのタンパク質によりもやもや病とコントロールを感度・特異度ともに非常に良好な値を持って識別可能であった。この結果をもとに4473Da ペプチドについて、LC-MS-MSを用いた解析により、同物質の分子構造が判明した。次にSandwich ELISAを用いてもやもや病患者および非もやもや病患者の髄液・血清検体について4473Daペプチド濃度の定量を行った。ELISAにおける髄液中の濃度とSELDI-TOF-MSの信号強度については同様の結果が得られたが、血清中の濃度とは相関関係が見られなかった。またもやもや病患者の髄液サンプルと年齢をマッチングさせた(特に小児例)のコントロール群の髄液について発現タンパクの比較プロファイリングを行った。biomarkerの値と血行再建術後の臨床経過を脳MRAや脳血管撮影で臨床像との比較検討において、m/z4473とangiogensis scoreに正の相関関係を見出した。この結果より得に小児もやもや病患者において、髄液中の4473Daペプチドが有用なbiomarkerになり得ると考えられた。この結果は論文投稿を行いin pressの段階である。4473Daペプチドの生理活性について、血管内皮細胞への影響をin vitroの実験系にて観察を行っている。生理活性が明らかになれば当物質を応用した実験モデルの作成も行う予定である。
3: やや遅れている
平成24年度は平成22年度に我々の研究グループより発表したバイオマーカー候補に対して患者群の年齢をマッチングさせたプロテオミクス解析を再度行い、小児で特に特異性の高いことを証明した。また術後の血管新生や血管の狭窄性変化との高い相関関係を明らかとし、この物質がもやもや病の診断のみならず予後に関与する有益なバイオマーカーであることを示した。この時点で当初の予定より遅延していたが平成25年度は物質の同定に成功したことよりELISA分析での追従データー解析が行え、実臨床に有効な診断方法の確立に前進できた。平成26年度は特定されたタンパクの機能分析のため血管内皮細胞に対するin vitroの実験を繰り返し行ったが、複数回の結果が一致せず解析が遅れた。
今後の展望について1.4473Daペプチドの生理活性について、血管内皮細胞への影響をin vitroの実験系にて引き続き観察を行う予定である。2.生理活性を明らかとし当物質を用いた動物実験モデル構築を行いたい。
得られたバイオマーカーの機能解析段階において血管内皮細胞に対するin vitro実験の結果が再現できず、生理活性の実証が困難であったため実験計画が遅れ次年度の使用額が生じた。
引き続き生理活性をの探索のためのin vitro実験のため血管内皮細胞の購入、培養の培地等に費用を当てたい。また結果総まとめの論文発表、学会発表に費用を費やしたい。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of stroke and cerebrovascular diseases
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