研究課題/領域番号 |
24592122
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
松島 聡 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50252367)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳動脈瘤 / 脳血管内治療 / 生理活性 / コイル |
研究概要 |
脳動脈瘤に対する血管内治療は、安全性・操作性の改善と、低侵襲治療への要望の高まりとともに、多数の症例に適応されるようになってきた。しかし、脳動脈瘤コイル塞栓術後の再開通により再治療を要することも少なくない。そこで、脳動脈瘤コイル塞栓術の再開通率を下げ、安全かつ確実な脳血管内治療を行うために、従来にはない全く新しい発想のデバイスや治療法を開発する必要がある。本研究では、ヘパリンと同様のリガンドをもつ硫酸化ジェランという機能性生体材料を繊維状に加工しプラチナコイルの中空糸として用い、細胞外マトリックスであるテネイシンCという機能蛋白質を結合させることにより、動脈瘤内の血栓器質化すなわち組織修復を促進する効果に優れた新しい生理活性コイルの開発をめざす。 本年度は、以下の検討を行った。 硫酸化ジェラン加工糸を、臨床で用いられている動脈瘤塞栓用コイルの中空に留置し、硫酸化ジェラン加工糸入りコイルを作成した。次にウサギのエラスターゼを使用した動脈瘤モデルに実際の血管内治療に即した方法で、コイル塞栓術を行い、2週間後に摘出し、動脈瘤頚部の新生内膜の形成、動脈瘤内部の器質化につき、組織学的検討を行った。その結果、プラチナコイル(A群)、硫酸化ジェラン加工糸入りコイル(B群)、硫酸化ジェラン加工糸入りテネイシンCコイル(C群)において、動脈瘤の大きさ、塞栓率は3群とも同等であったが、瘤内器質化面積はC群で有意に大きかった。加えて、硫酸化ジェラン加工糸がコイルの操作性に干渉しないことも確認できた。以上のことから、硫酸化ジェラン加工糸入りテネイシンCコイルが血栓器質化促進効果を持つことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、以下の理由によりおおむね順調に進展していると考える。 1.硫酸化ジェラン加工糸を動脈瘤塞栓用コイルの中空に留置し、硫酸化ジェラン加工糸入りコイルを作成できた。 2.ウサギのエラスターゼ動脈瘤モデルを安定して作製することが可能となった。 3.ウサギエラスターゼ動脈瘤モデルに対して、実際の血管内治療に即した方法で、コイル塞栓術を行うことが可能となった。 4.以上の技術的成功により、ウサギエラスターゼ動脈瘤モデルにおいて、硫酸化ジェラン加工糸入りコイルが瘤内器質化を促進するかを評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得られた結果をもとに以下の検討を行う。 1.硫酸化ジェラン加工糸入りテネイシンCコイルによる器質化促進効果のメカニズムを明らかにするため、組織修復や炎症反応に関連する増殖因子の関与を免疫組織化学的に検討する。 2.前年度に引き続き、硫酸化ジェラン加工糸入りコイルを用い、ウサギエラスターゼ動脈瘤モデルに実際の血管内治療に即した方法で、コイル塞栓術を行い、2週間後に摘出し、動脈瘤頚部の新生内膜の形成、動脈瘤内部の器質化につき、組織学的検討を行う。さらに、4週間、8週間、12週間の長期留置群で過剰な組織反応が見られないことを確認する。 3.6ヶ月、12ヶ月の長期留置群における変化を確認し、将来の臨床応用への安全性を評価する。以上の結果をもとに、最適な条件のテネイシンC結合硫酸化ジェラン加工糸入りコイルの作成をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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