研究課題/領域番号 |
24592122
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
松島 聡 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50252367)
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キーワード | 脳動脈瘤 / 脳血管内治療 / 生理活性 / コイル |
研究概要 |
脳動脈瘤に対する血管内治療は、安全性・操作性の改善と、低侵襲治療への要望の高まりとともに、多数の症例に適応されるようになってきた。しかし、術後に再開通を来すこともあり、再治療を要することも少なくない。そこで、脳動脈瘤コイル塞栓術後の再開通率を下げ、安全・確実な脳血管内治療を行うために、従来にはない新しい発想のデバイスを開発する必要がある。本研究では、ヘパリンと同様のリガンドをもつ硫酸化ジェランという機能性生体材料を繊維状に加工しプラチナコイルの中空糸として用い、細胞外マトリックスであるテネイシンCという機能蛋白質を結合させることにより、動脈瘤内の血栓器質化すなわち組織修復を促進する効果に優れた新しい生理活性コイルの開発をめざす。前年度までの成果として、ウサギのエラスターゼ動脈瘤モデルを安定して作成できるようになった。また、硫酸化ジェラン加工糸入りコイルの作成が可能となり、血栓の器質化を促進させるための硫酸化ジェラン加工糸入りテネイシンCコイル作成における至適条件を決定した。さらに本年度は、以下の検討を行った。ウサギのエラスターゼ動脈瘤モデルにおいて、プラチナコイル(A群)、硫酸化ジェラン加工糸入りコイル(B群)、硫酸化ジェラン加工糸入りテネイシンCコイル(C群)の3群にわけて動脈瘤コイル塞栓術を行い、2週間後に組織学的評価を行った。その結果、A群に比較し、B群では瘤内の血栓器質化促進効果を持つことが分かった。さらに、C群では、B群と比較し、さらに強い瘤内の血栓器質化促進効果を持つことが明らかとなった。B群、C群における器質化促進効果のメカニズムを明らかにするため、TGF―β、テネイシンC、MMP-9抗体を用いた免疫組織化学的検討を行った。その結果、A群と比較し、B、C群でTGF―β、テネイシンC、MMP-9抗体陽性細胞が中膜平滑筋層、器質化部分で多く認めることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)硫酸化ジェラン加工糸を動脈瘤塞栓用コイルの中空に留置し、硫酸化ジェラン加工糸入りコイルを作成できた。 2)ウサギのエラスターゼ動脈瘤モデルを安定して作製することが可能となった。 3)血栓の器質化を促すための硫酸化ジェラン加工糸入りテネイシンCコイル作成における至適条件が決定できた。 4)ウサギエラスターゼ動脈瘤モデルに対して、実際の血管内治療に即した方法で、コイル塞栓術を行うことが可能となった。 5)ウサギエラスターゼ動脈瘤モデルにおいて、硫酸化ジェラン加工糸入りテネイシンCコイルが瘤内の器質化促進効果があることを証明できた。 6)硫酸化ジェラン加工糸入りコイルおよび硫酸化ジェラン加工糸入りテネイシンCコイルのよる瘤内の器質化促進効果に、TGF―β、テネイシンC、MMP-9が関与する可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
1)前年度に引き続き、硫酸化ジェラン加工糸入りコイルを用い、ウサギエラスターゼ動脈瘤モデルに実際の血管内治療に即した方法で、コイル塞栓術を行い、2週間後に摘出し、動脈瘤頚部の新生内膜の形成、動脈瘤内部の器質化につき、組織学的検討を行う。さらに、4週間、8週間、12週間の長期留置群で過剰な組織反応が見られないことを確認する。 2)6ヶ月、12ヶ月の長期留置群における変化を確認し、将来の臨床応用への安全性と有効性を検討する。 3)さらに条件を変えて作成した硫酸化ジェラン加工糸入りテネイシンCコイルについて、その物性や安全性、血栓器質化促進効果を調べ、さらに優れた性質をもつコイルが作成できないか検討する。以上の結果をもとに、最適な条件のテネイシンC結合硫酸化ジェラン加工糸入りコイルの作成をめざす。 4)以上の研究成果をまとめて報告する。
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