研究実績の概要 |
悪性グリオーマは手術療法、化学療法、放射線療法を併用しても予後は極めて不良である。分子標的治療薬のインテグリンαvβ3, αvβ5の阻害薬であるcilengitideは抗腫瘍血管新生作用、抗腫瘍浸潤作用及び抗腫瘍細胞効果が報告されている。海外において膠芽腫症例に対する多施設共同第2相および第3相試験が行われた。インテグリンのリガンドであるCYR61 (cysteine-rich protein 61)は脳腫瘍の血管新生や増殖に関連しているとされ、その発現上昇によりインテグリンとのautocrine loopが活性化する。今回我々はCYR61の発現によりcilengitideに対するグリオーマの感受性が上昇するか否かを検証し、また、グリオーマ細胞、症例を対象にCYR61の発現解析し、CYR61のバイオマーカーとしての有用性について検討を行った。平成24年度はグリオーマ細胞株を用いて、分泌蛋白CYR61の発現におけるcilengitideの反応性を調べた。平成25年度はIn vitroで、CYR61を遺伝子導入により強発現または抑制することで、または、分泌蛋白CYR61を用いることで、cilengitide投与時グリオーマ細胞株に対する影響を検討できた。平成26年度はグリオーマ症例を対象とし、組織標本を抗CYR61抗体にて免疫組織染色を行いバイオマーカーとしての可能性を探ることができた。さらに、分泌蛋白CYR61と他の予後因子との関係(MGMTなど)との予後との関連性を調べた。統計学的データを解析し、学会発表を行った。現在論文投稿中である。
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