研究課題
本研究はくも膜下出血(SAH)後に発症する脳血管攣縮のメカニズムを解明するため、1)脳血管攣縮におけるコレステロールの影響の検討、2)ATP-binding casscette transporter A1(ABCA1)を介するコレステロール代謝が脳血管攣縮におけるCa2+感受性機構に及ぼす影響の検討を目的とする。本年度は、正常ラット群、高脂血症ラット群、コレステロール除去剤投与ラット群を用いてSAHモデル(double hemorrhage model)を作成し、コレステロールがSAH後の脳血管攣縮に及ぼす影響を検討した。各群の内頚動脈を採取し、ガスクロマトグラフ法にて血管平滑筋内における総コレステロール濃度を測定したところ高脂血症群で有意に高く、コレステロール除去群では総コレステロール濃度の上昇は抑制された。Cranial window法を用いて各群の脳底動脈径(SAH model, Day5)を測定することで脳血管攣縮の程度を解析したところ、正常群と比較して高脂血症群で著名な脳血管攣縮が認められた。コレステロール除去剤投与群では、コレステロールの負荷が引き起こす血管攣縮の増悪は抑制された。正常群の脳血管攣縮はRho-kinase阻害剤のY27632の後投与にて軽減した。我々はすでにRho-kinaseが引き起こす血管平滑筋のCa2+感受性機構が血管平滑筋内に含まれるコレステロールによって制御されることを報告しているが、本研究結果から、このメカニズムがSAH後の脳血管攣縮の病態にも関与していることが示唆された。ABCA1を介するコレステロール代謝と脳血管攣縮についての解析は、ヒト血管平滑筋培養細胞を用いたoxyhemoglobin刺激によるSAH modelの作成には成功したが、SAHによるABCA1の蛋白発現の変化を証明する段階には至っていない。
すべて 2015
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Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism
巻: 印刷中 ページ: 1-8
10.1038/jcbfm.2014.260