研究課題/領域番号 |
24592131
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
里見 淳一郎 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10304510)
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研究分担者 |
永廣 信治 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (60145315)
兼松 康久 徳島大学, 大学病院, 助教 (90363142)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 脳動脈瘤 / 体内塩分貯留 / ミネラルコルチコイド |
研究概要 |
脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血をきたし、約50%が重篤となり致死的な経過をたどるか重い後遺症を残す。日本は欧米諸国に比べ脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の罹患率が高く、また未破裂脳動脈瘤は脳ドックなどの普及により比較的よく発見される(成人の約4-5%の頻度)。その背景に日本人の食塩の過剰摂取による高血圧の存在が示唆されている。しかし脳動脈瘤の増大や破裂を予防する有効な薬物治療はいまだ確立されていない。脳動脈瘤が男性に比べて女性に多く発症し、特に閉経期以後がに多く発見されるという疫学的データに基づいて、我々は独自にエストロゲン欠損・血行力学的負荷・高血圧誘導・食塩負荷による雌ラットの実験脳動脈瘤モデルを確立した。このモデルを用いていくつかのタイプの異なる薬剤による基礎的な治療研究を行った結果、アルドステロン抑制により体内の余分なナトリウム排泄作用を示す選択的 “ミネラルコルチコイド受容体阻害剤(MRB)"が最も脳動脈瘤形成・増大を抑制することが明らかとなった。そこで本研究では、血行力学的負荷、エストロゲン欠損状態の雌性ラットを用いて、高血圧誘導もしくは食塩負荷による脳動脈瘤形成における影響を検討した。卵巣摘出の雌性ラットにおいては塩分負荷によって、血圧に影響なく、動脈瘤形成頻度が上昇することを見出した。これに対し、Na利尿作用を有することが判明しているangiotensin type 1受容体阻害剤であるオルメサルタンを用いて治療すると動脈瘤形成が抑制された。動脈瘤形成に関与するメカニズムとしてエストロゲン欠乏状態では水分とは独立して体内に貯留されるwater-free Naの蓄積が関係することを新たに見出している。さらにその分子機序についても明らかにし、論文をHypertensionに投稿、受理された(Hypertension. 2012;60:1309-15)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度実施計画で、脳動脈瘤発生、増大における体内塩分貯留の増加の役割に着目し、高血圧及びエストロゲン欠乏との関連性についての検討を行うことと、薬物療法による脳動脈瘤増大抑制効果とその分子機構の検討を目的としていた。ラットモデルを用いて、高血圧誘導もしくは食塩負荷による脳動脈瘤形成における影響を検討し、卵巣摘出の雌性ラットにおいては塩分負荷によって、血圧に影響なく、動脈瘤形成頻度が上昇することを見出した。これに対し、オルメサルタンを用いて治療すると動脈瘤形成が抑制され、動脈瘤形成に関与するメカニズムとしてエストロゲン欠乏状態では水分とは独立して体内に貯留されるwater-free Naの蓄積が関係することを新たに見出した。さらにその分子機序についても明らかにし、論文をHypertensionに投稿、受理され、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.脳動脈瘤発生、増大における体内塩分貯留抑制による治療効果と分子機構を解明する。 eplerenone投与で有効性が高いと思われるが、ARBも類似した作用があり、かつ両者とも降圧剤として認可され、安全性が確認されている。有用性を評価して、臨床試験の準備を進める。 2. 脳動脈瘤形成、増大抑制における骨髄前駆細胞による修復機構を解析する。 1)骨髄由来前駆細胞における脳動脈瘤壁への関与を検討する。 2)薬物投与による骨髄由来前駆細胞による脳動脈瘤修復機構への関与を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物(ラット)、高塩食、実験器具、試薬、染色用抗体 等消耗品の購入 研究成果をまとめ英文著名雑誌に投稿するための費用
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