研究課題/領域番号 |
24592132
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター(臨床研究部(成育)、臨 |
研究代表者 |
兼松 康久 独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター(臨床研究部(成育)、臨, その他部局等, その他 (90363142)
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研究分担者 |
里見 淳一郎 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10304510)
永廣 信治 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (60145315)
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キーワード | 脳虚血 / エストロゲン / 高塩分食 / 組織内Na貯留 |
研究概要 |
これまでは高血圧と塩分摂取は一体化して考えられており、塩分摂取により高血圧を誘導し、その結果心臓や脳血管障害にいたると考えられている。しかし、我々のグループにおける実験的研究から、雌性ラットにおいて高塩分食を負荷すると体内Na貯留の増加が生じ、血圧とは独立して、脳血管障害に関係することを見出した。エストロゲンは血管障害に対して保護作用を示すことが多くの報告で証明されており、閉経によるエストロゲン欠乏が脳血管障害の増加に関与していると考えられている。しかし、高齢女性における脳梗塞発症を想定した病態や薬効およびその分子機構を探求した報告は国内外ともに、ほとんどない。本研究では、体内塩分貯留量と脳血管障害との関連性を調べた。高塩分食により雄性ラットでは体内Na貯留に関連して血圧が上昇するのに対して、雌性ラットでは卵巣摘出の有無にかかわらず、血圧への影響は見られなかったが、卵巣摘出の雌性ラットでは雄性ラットより脳梗塞サイズの拡大が認められた。これらの結果から塩分負荷に対する血圧および組織障害に対する性差が示唆された。Naの体内貯留に関係する可能性があるミネラルコルチコイド受容体阻害剤を用いて有効性を調べ、脳損傷の抑制と関連して脳内Na量が低下しており、この作用にNa排泄ポンプのATP1a3が関与していることを見出している。この成果をまとめて英文誌Hypertensionに投稿、revisionを準備中である。エストロゲン欠乏に塩分が負荷された状態において、血圧とは独立してNa貯留が脳損傷に影響することから、これを制御することが重要であるという知見を新たに得た。この知見は脳梗塞予防や治療を新たな観点から考える上で意義があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳内Na貯留量と脳虚血後の脳損傷拡大が相関することを初めて見出し、この組織内Na貯留を薬剤によって制御可能であることも確認した。この知見は従来、高血圧の治療のみにフォーカスされていた症例に対して、新たな観点から脳梗塞予防や治療を考える必要性を示唆しており、大いに意義があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1) 論文受理に向けて追試を行い、採択後は臨床研究に移行する. 2) 高塩分食を負荷した場合の虚血性脳損傷への影響について、性差および卵巣摘出の有無による違いを明らかにするためNa, K, CLの組織内濃度を測定し、関連性を解析する。 3) 脳損傷拡大における分子機構を明らかにするため、ミネラルコルチコイド受容体阻害剤およびエストロゲン治療の場合と未治療群の間での差をNa排出ポンプおよびミネラルコルチコイド受容体発現などの遺伝子レベルや蛋白レベルでの解析を行う。
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