研究課題
一般に閉経前の女性が同世代の男性と比べ脳・心血管疾患の発症率が低いのに対し、閉経後はその発症率のみならず、重症度も増加する。しかし高齢女性における脳梗塞発症を想定した病態や薬効およびその分子機構を探求した報告は国内外ともに、ほとんどない。エストロゲンは血管障害に対して保護作用を示すことが多くの報告で証明されており、閉経によるエストロゲン欠乏が脳血管障害の増加に関与していると考えられている。これらの知見を踏まえて、正常血圧下において体内塩分貯留量と脳血管障害との関連性を調べた。通常食を与えた雌雄ラットに較べて、高塩分食により雄性ラットでは体内Na貯留に関連して血圧が上昇するのに対して、雌性ラットでは卵巣摘出の有無にかかわらず、血圧への影響は見られなかった。これらに脳梗塞を誘発したところ卵巣摘出の雌性ラットでは雄性ラットより脳梗塞サイズの拡大が認められた。これらの結果から塩分負荷に対する血圧および組織障害に対する性差が示唆された。エストロゲン欠乏状態では組織内にNaの蓄積が増加し、さらに塩分を負荷すると、この作用が増悪され、血圧とは独立してNa貯留が脳損傷に影響することから、血圧とは別に、Na蓄積を制御することが重要であるという見解を新たに示した。エストロゲン欠乏に塩分が負荷された状態での研究は国内・外ともにほとんどないことから本研究は、新たな観点から脳梗塞予防や治療を考える上で意義があると思われる。
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