研究課題/領域番号 |
24592133
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
東 洋一郎 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (80380062)
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研究分担者 |
八幡 俊男 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (40380323)
清水 惠司 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (70116044)
藤本 康倫 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (80589789)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 頭部外傷 / うつ病 / 脳保護薬 |
研究概要 |
[具体的な内容] 昨年度の検討により報告者らは、①受傷後からうつ様行動が出現するまでの日数と衝撃の強さについて検討することで頭部外傷後うつ病発症モデルマウスの作成に成功し、②受傷直後に既存の脳保護薬または藻類由来の複合多糖を投与することでうつ様行動の出現が抑制できることを見出した。さらに報告者らは③慢性緩和ストレスのうつ様行動誘導条件を解析することで軽度ならびに重度うつ様行動を誘導できる条件を確立した。 [意義、重要性] 頭部外傷患者はしばしば「うつ病」を発症するが、損傷が直接の原因となる他に頭部外傷が1次的なトリガーとして分子や細胞を変化させ、その後の環境ストレスに対する感受性を高める可能性に関してほとんど解明されていない。昨年度の検討により報告者らは、マウスが軽度または重度のうつ様行動を現す頭部外傷条件ならびに慢性緩和ストレス条件を確立しており、これは本研究課題を遂行するために重要な成果である。また報告者らは脳保護薬または藻類由来の複合多糖が頭部外傷後のうつ様行動の出現を抑制することも見出しており、これは頭部外傷後のうつ病発症に対する新しい予防法の開発、さらには頭部外傷後うつ病発症の機序または環境ストレス感受性分子の同定につながる重要な手掛かりになることが期待できるという点で臨床的のみならず学術的にも意義があり重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画を成功させるためには、マウスに軽度または重度のうつ病様行動を惹起させる頭部外傷ならびに慢性緩和ストレスの十分な条件設定が必須であるため、昨年度は多くの時間を費やしてこの検討を行った。その成果として頭部外傷後うつ病発症モデルマウスの作成に成功し、軽度または重度うつ病様行動を期待通りに惹起させることが可能になった。このようなことから、頭部外傷後に慢性緩和ストレスを与えて脳内亜鉛関連分子の発現変化を検討することとミクログリアを用いた検討を行う時間的余裕がなくなり当初の計画よりやや遅れる事態に至った。しかしながら報告者らはモデルマウス作成に関して十分な条件設定を終えているため、今後は迅速な研究を行うことが期待できる。このことは、すでに代表者らが既存の脳保護薬ならびに藻類由来複合多糖が頭部外傷後うつ病様行動の出現を抑制できることを見出していることからも実証されている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 昨年度までの検討により確立した頭部外傷条件と慢性緩和ストレス条件を用いて、頭部外傷後慢性緩和ストレスモデルマウスを作成し、亜鉛または亜鉛キレート剤を投与することで頭部外傷後のストレス感受性に対する亜鉛の効果を検討する。 2. 頭部外傷後慢性緩和ストレス高感受性モデルマウスを用いて、頭部外傷後に誘導されるストレス感受性(頭部外傷誘導ストレス感受性)分子を亜鉛関連分子に注目しながら探索し、頭部外傷後にストレス感受性が亢進する機序を解明する。 3. 脳保護薬または藻類由来の複合多糖による頭部外傷後うつ病発症抑制の機序について検討する。 4. 低濃度亜鉛刺激によるミクログリア活性化抑制効果の機序に関して頭部外傷誘導ストレス感受性分子に着目しながら解析する。 5. 頭部外傷後のマウスから末梢血を回収し、セルソーターなどを用いて血中細胞における頭部外傷誘導ストレス感受性分子の発現変化を検討し、同時にエピジェネティックな修飾についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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