研究課題/領域番号 |
24592133
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
東 洋一郎 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (80380062)
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研究分担者 |
八幡 俊男 高知大学, 医歯学系, 助教 (40380323)
清水 惠司 高知大学, 医歯学系, 教授 (70116044)
藤本 康倫 高知大学, 医歯学系, 講師 (80589789)
上羽 哲也 高知大学, 医歯学系, 教授 (00314203)
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キーワード | 頭部外傷 / うつ病 / 脳保護薬 / 活性酸素 / 5-lipoxygenase / アストロサイト |
研究概要 |
[具体的内容] 昨年度の検討により報告者らは、①頭部外傷直後のマウスに脳梗塞治療薬であるエダラボンを投与することで頭部外傷3日後に惹起されるうつ病様行動が阻止されることを見出した。さらに②頭部外傷1日後の海馬領域においてNADPH oxidsaeを介した酸化ストレスと同領域におけるアストロサイト内の5-lipoxygenaseの活性化を見出し、エダラボンがこれらを抑制することを明らかにした。また③5-lipoxygenase阻害剤を頭部外傷直後と1日後にマウスへ投与することでうつ病様行動が阻止されることを明らかにした。 [意義、重要性] 頭部外傷患者はしばしばうつ病を発症するが、このような頭部外傷後うつ病はリハビリテーションや社会復帰への悪影響や自殺などの要因となることが危惧されている。また頭部外傷患者ではうつ病症状が顕著であっても適切な診断や治療が行われにくいことから重症化しやすく、さらに抗うつ病薬も効き難いことから重大な問題とされている。昨年度の検討より報告者らは脳梗塞治療に用いられているエダラボンが頭部外傷後うつ病に有効であることを示唆する結果を見出しており、同時に頭部外傷後うつ病の発症機序についても明らかにしている。これらの結果は、頭部外傷後うつ病の新規治療法の開発ならびに環境ストレス感受性分子の同定につながる重要な手掛かりになることが期待できるという点で臨床的のみならず学術的にも意義があり重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、頭部外傷後に変化する分子のうち環境ストレスに対する感受性を高める分子を同定し、うつ病発症への関与を詳細に解析することで、全く新しい頭部外傷後のうつ病発症に対する検査法や予防法ならびに治療法の開発を研究の全体構想としている。現在までに報告者らは、頭部外傷後うつ病モデルマウスの作成に成功しており、さらに頭部外傷後うつ病の発症機序を詳細に解析することで海馬領域におけるNADPH oxidsaeとアストロサイト内の5-lipoxygenaseの活性化が大きく関与していることと、エダラボンがこれら酵素の活性化を抑制しうつ病発症を阻止することを明らかにしている。これらの結果は頭部外傷後うつ病発症に対する検査法や予防法ならびに治療法の開発につながる手掛かりになることが期待される。また海馬におけるNADPH oxidaseの活性化は拘束ストレスなどによって惹起されるうつ病様行動に関与しており、5-lipoxygenase遺伝子欠損マウスは水泳ストレスに対して抗うつ様行動を示すことが報告されていることから、これらが環境ストレス感受性分子である可能性が考えられる。以上のことから本年度までの達成度はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は頭部外傷モデルマウスに慢性緩和ストレスを暴露することで、その後のうつ病様行動の変化を検討し、すでに報告者らが同定した頭部外傷後うつ病発症関連遺伝子(NADPH oxidaseならびに5-lipoxygenae)が慢性緩和ストレス後のうつ病様行動の変化に関与しているか否かを検討し、アストロサイトに由来する慢性緩和ストレス感受性分子の同定につなげる。さらに頭部外傷モデルマウスにおける慢性緩和ストレス感受性変化に対するミクログリアの関与についても検討することでミクログリアに由来する慢性緩和ストレス感受性分子の同定し、また末梢血中細胞を分取してミクログリアと同様の分子の変化が存在するか否かを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬の国内在庫がなかったため、次年度の購入となった。 試薬の購入予定である。
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