研究課題
[具体的内容] 昨年度の検討により報告者らは、以下の2点について明らかにした。①脳振とう誘発性うつ病様行動モデルマウスにLPSを腹腔内投与することで炎症ストレスを負荷したが、うつ病様行動を増悪化しなかった。②亜鉛キレート剤を投与することで一過性に脳内キレータブル亜鉛を減少させたマウスに脳振とうを負わせたところ、その後に惹起されるうつ病様行動が抑制された。[意義、重要性] 頭部外傷はしばしば「うつ病」を発症するが、損傷が直接の原因となる他に、脳への衝撃が1次的なトリガーとなり分子や細胞を変化させ、その後のストレスへの感受性の変化が原因となる可能性が考えられている。しかし未だこれについて十分な解析が行われていない。昨年度の検討により、①脳振とう誘発性うつ病はその後の炎症ストレスにより増悪しないことが明らかになった。Fluid percussion法による中程度頭部外傷モデルマウスでは同様の炎症ストレスによりうつ病様行動の増悪化が報告されている。これら相反する結果は、脳振とうのような軽度頭部外傷と中程度頭部外傷では外傷後のストレスに対する感受性変化が異なることを示しており、頭部外傷の重症度に合わせたうつ病予防法の開発が必要であることを提案する臨床的さらには学術的にも意義のある重要な成果である。また、報告者らは②一過性に脳内キレータブル亜鉛を減少させたマウスに脳振とうを負わせたところ、脳振とうによって惹起されるうつ病様行動の出現が抑制されることを見出した。キレータブル亜鉛は海馬領域などのグルタミン酸神経細胞内に貯蔵されているが、頭部外傷時に細胞外に過剰放出されることが知られている。このことから今回の結果は脳振とう誘発性うつ病の発症機序の詳細を解明するための重要な成果であり、さらにこの成果は治療法ならびに予防法の開発につながることが期待される
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