研究実績の概要 |
頸動脈狭窄症における新生血管はプラークの不安定性を示す因子の一つであるが、その血行動態やプラーク内出血のメカニズムについては十分解明されていない。我々は頸動脈内膜剥離術CEAの際に施行するICG video angiography で得られる新生血管の描出パターンに着目し、プラーク内出血のメカニズムにつき検討した。 2010年から2014年まで当施設にてCEAを行った中等度から重度の頸動脈狭窄症症例をprospectiveに解析した。ICG video angiographyは動脈内投与、静脈内投与をそれぞれ行い、1. 動脈内投与で即座に内膜側新生血管が描出されwash outされる群(内膜endothelium由来の新生血管NVeと定義)、2. 静脈内投与にて内腔描出から10秒後に描出され、washoutが遅延する群(外膜vasa vasurum由来の新生血管NVvと定義)、3.新生血管が描出されない群、に分類し、臨床所見、画像所見、病理所見との関連性につき検討した。 連続57症例中、NVe群13例、NVv群33例、描出無し11例であった。3群においてbackgroundに有意差は見られなかった。しかし、NVe群は有意に症候性が多くみられた(artery to artery embolism 61.5%、TIA 23.1%)。病理学的検討ではNVe群は有意にプラーク内出血(P=0.002), 陳旧性出血を示すヘモジデリン(P =0.04)の程度が強かった。これらはtime of flight MR imagingとも強い相関を呈した。 興味深いことに内膜側の炎症所見は有意にNVe (R=0.43, P=0.008), ヘモジデリン(R=0.62, P<0.0001)、プラーク内出血(R=0.349, P=0.0097)と相関した。 炎症を介した内膜側への新生血管の進展と、内腔からNVeへの直接な血流がプラーク内出血に関連している可能性が示唆された。
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