研究課題/領域番号 |
24592135
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
長谷川 雄 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (40599114)
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研究分担者 |
山田 和慶 熊本大学, 医学部附属病院, 准教授 (00398215)
倉津 純一 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (20145296)
甲斐 豊 熊本大学, 医学部附属病院, 教授 (30322308)
浜崎 禎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (60433033)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | くも膜下出血 |
研究概要 |
モデル作成において、より安定したクモ膜下出血(SAH)を得るために、ワイヤー穿刺法による手術を確立した。これは従来のナイロン糸の代わりに、タングステンワイヤーにて血管を穿刺する方法であり、ナイロン糸にて穿刺する際、時折認められた穿刺物挿入困難がほとんど起こらなくなった。このモデルを用い、SAH後早期脳損傷の主病態である脳浮腫を軽減することでその予後改善を目指すべく、スフィンゴシン1リン酸(S1P)レセプターのアゴニストであるFTY720のSAHに対する治療効果を検討した。 ラットを偽手術群、生理食塩水投与群、治療群(1mg/kg FTY720投与群)の3群に分け、SAH導入30分後に生理食塩水又はFTY720 1mg/kgを投与して、脳血流、神経所見、脳浮腫、肺浮腫、脾臓への影響の程度を検討した。 まずSAHによる死亡率は45%であった。生理食塩水投与群において、SAH導入5分後の脳血流は偽手術群と比べ低下していた。また24時間後の脳血流の低下は改善していたが、一方で神経所見の悪化、脳浮腫の増悪を認めた。また全身の臓器において、肺浮腫は増悪傾向、脾臓も体重比で腫大傾向にあった。組織学的には、SAH作成24時間後において、TUNEL陽性神経細胞の有意な増加が皮質と海馬に認められ、また血管内皮細胞にもTUNEL陽性細胞が多く認められた。さらにwestern blot法にてcleaved caspase-3の発現量増加も認めた。治療群においては、生理食塩水投与群と比べ、SAHの出血量は同程度、脳血流の低下も同等であったにもかかわらず、神経所見の改善傾向、脳浮腫の軽減傾向を認めた。また肺浮腫の軽減はほとんど認められなかったが、脾臓の腫大も軽減傾向にあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SAHモデルを作成するにあたり、SAHモデルの表現型は、系統間に差があると思われ、従来のナイロン糸では、SAHモデルの表現型が不安定な傾向にあった。そこでワイヤー穿刺法に切り替え、安定的なモデルが得られるようになった。死亡率が45%であり、従来の報告の中では高めであるが、まだ研究初期の段階であり、研究を遂行していく中で、明確な数字が出てくると思われる。 以上モデル安定に少々時間がかかったために、まずはパイロットスタディで、FTY720の治療効果を検討したが、上記の如く、良好な結果が得られ始めている。
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今後の研究の推進方策 |
以上のデータをもとに、次年度では上記のFTY720投与による予後改善確認を継続するとともに、その抗アポトーシス作用による神経細胞死、血管内皮細胞死の軽減を確認する。またFTY720の脾臓に対する効果から、その免疫抑制効果を確認するため、Tリンパ球の脳内への浸潤の程度を検討する。さらに、それらSAH急性期に生じる保護効果が慢性期まで持続し、長期予後改善に貢献するか、SAH作成28日後の脳萎縮の程度や認知機能の評価も同時に行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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