研究課題/領域番号 |
24592135
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
長谷川 雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (40599114)
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研究分担者 |
山田 和慶 熊本大学, 医学部附属病院, 准教授 (00398215)
倉津 純一 熊本大学, その他の研究科, 教授 (20145296)
甲斐 豊 熊本大学, 医学部附属病院, 教授 (30322308)
浜崎 禎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (60433033)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | くも膜下出血 / 早期脳損傷 |
研究実績の概要 |
1)過去2年間行っていたfacemaskによる血管穿刺法において死亡率が60%程度であり、人道的配慮、経済的時間的コストの面から、死亡率軽減目的で人工呼吸器を購入しクモ膜下出血(SAH)モデルを作成、死亡率は20%弱に減少した。しかし手術管理法変更の為これまでの実験はクローズせざるを得ず、今までの結果を解析し、SAH後急性期の脳浮腫評価法として広く用いられている脳水分含量と脳重量との関係を検討した。脳重量は簡便な計測法で脳水分含量と相関するものの、体重や脳体積にも強く影響されること、脳水分含量自体は体重や脳体積には影響されず、脳浮腫の評価法として優れていることがわかった。この結果をまとめ現在論文投稿中である。 2)死亡する動物はほぼ全て5分以内に呼吸が停止、その数分後に心停止が生じた。その知見をもとに昨年度に引き続きSAH後超急性期の脳内環境の変化について実験を行った。前年度に得られた視索におけるリン酸化ERK陽性細胞の増加(細胞傷害性変化)とIgG染色性の上昇(脳浮腫)以外に、脳動脈の血管内皮細胞でもリン酸化ERK陽性細胞の増加が判明した。従ってSAH後超急性期の脳血管傷害の影響を検討すべく、術10分後にアセタゾラミドを静注し血管反応性の変化を30分にわたって計測した。SAH後重症度に依存し脳血流は低下するが、重症SAHの方が脳血管反応性は上昇し、特に静脈系での血流の変化が顕著であった。またSAHにて脳動脈は有意に狭小化していた。以上新規性のある結果が得られ論文作成中である。 3)現在人工呼吸器管理下にて,本研究目的であるスフィンゴシン受容体作動薬FTY720のクモ膜下出血後早期脳損傷における保護作用について実験中である。1mg/kgのFTY720にて脳浮腫軽減効果が有意に認められ、現在拮抗薬を脳室内投与し、FTY720の効果が修飾を受けるかどうか実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工呼吸器管理下に手術を行うため、研究デザインを変更し実験を新たに開始した。しかし過去2年のデータを有為なものにするため解析を行い、論文投稿することができた。また過去2年の結果より得た知見から着想に至った、クモ膜下出血(SAH)超急性期の頭蓋内環境の変化における検討も終了し、現在論文執筆中である。 現在上述の如く人工呼吸器管理下にFTY720の治療効果の検討を行っているが、過去2年の結果同様有意な脳浮腫軽減効果が認められており、再現性も確認できた。FTY720はスフィンゴシン受容体作動薬であるが、受容体拮抗薬であるVPC23019を脳室内投与して、FTY720の効果が修飾を受けるか現在検討中である。但し延長申請の許可を頂いたものの助成期間は残り1年であり、その上FTY720のSAHにおける保護効果についての論文が2015年に入り発表されたため、有意な効果に絞って研究計画を縮小する予定である。 研究計画の主目的は変更を余儀なくされた。しかし、全体の実験結果としては有意な結果が得られており、変更前のデータも有為な形にすべく論文化することができたことに加え、派生した研究も新規性のある結果が得られ論文化を検討できているため、総合的にやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
FTY720の脳卒中に対する治療効果は、脳の神経細胞にあるスフィンゴシン受容体に直接作用することで生じるとの報告と、循環するリンパ球の数を減じることで脳へのリンパ球の浸潤を抑制し、炎症反応を軽減させることで脳保護効果を示すという間接作用との両方が報告されている。 従って今後はVPC23019を脳室内に投与し、上記の直接作用と間接作用との役割について検討する予定としている。詳細にはFTY720による脳浮腫軽減効果が認められなくなれば直接作用、VPC23019の修飾を受けず脳保護効果が認められれば間接作用と推察されるであろう。さらには脳内のリンパ球浸潤の違い、血液検査におけるリンパ球減少の有無、直接作用により修飾を受けるアポトーシス関連のタンパクの変化を確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年より再実験を開始しており、現在得られたデータをさらに発展させるため。具体的には、VPC23019を脳室内に投与し、FTY720投与下に脳浮腫を計測し、sham投与群と比較する。また脳内のリンパ球浸潤の違い、血液検査におけるリンパ球減少の有無、直接作用により修飾を受けるアポトーシス関連のタンパクの変化を確認する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に使用する動物や抗体、麻酔薬などの購入、論文作成の際の英文校正代に使用する。
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