研究課題/領域番号 |
24592135
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
長谷川 雄 熊本大学, 生命科学研究部, 講師 (40599114)
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研究分担者 |
山田 和慶 熊本大学, 医学部附属病院, 教授 (00398215)
倉津 純一 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (20145296)
甲斐 豊 熊本大学, 医学部附属病院, 教授 (30322308)
浜崎 禎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (60433033)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | くも膜下出血 / 早期脳損傷 / FTY720 / スフィンゴシン1リン酸受容体 |
研究実績の概要 |
FTY720はスフィンゴシン1リン酸(S1P)受容体作動薬であり、神経細胞やグリア細胞はS1P受容体を発現しており、血液脳関門を通過できるため、直接的に脳のS1P受容体を介した作用を発揮する可能性がある。またFTY720はリンパ球のS1P受容体にも作用し、二次リンパ組織からリンパ球の移出を阻害することで免疫抑制作用を惹起する。脳卒中において、脳内へのリンパ球の浸潤はその病態に重要であることから、FTY720の傷害脳へのリンパ球浸潤抑制を介した脳保護効果も多く報告されている。 前年度までにFTY720のクモ膜下出血(SAH)における早期脳損傷の軽減効果を明らかとした。本年度は①保護効果の組織学的検討②保護効果のメカニズムが中枢への直接作用によるものかについて検討した。①IgG染色を用いて血液脳関門の破綻を検討したところ、SAHにてその破綻は顕著に認められるもののFTY720にて軽減した。また脳内のマクロファージの浸潤は、SAHにて細動脈周囲にマクロファージの発現を認め、FTY720ではそれが減少傾向であった。②ラットに深麻酔を行い、脳定位固定装置を用いてS1P受容体阻害薬であるVPC23019(V+SAH+FTY群)またはその溶媒(S+SAH+FTY群)を投与後、仰臥位にて体位を確保しSAHの手術を行い、SAH導入30分後にFTY720を1mg/kg投与した。その24時間後に神経学的所見、脳血流、脳浮腫を評価した上それぞれについて比較検討した。SAHによる死亡率は44.4%であった。神経所見はV+SAH+FTY群で幾分か増悪傾向であったものの、脳血流や脳浮腫は両群で差が無かった。以上の結果から、FTY720のSAHにおける脳保護効果は、中枢への直接作用よりもリンパ球減少等末梢作用に由来する間接的な効果によるものと推察された。以上の結果をまとめ、現在国際誌に投稿準備中である。
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