研究概要 |
重症くも膜下出血患者に対し、血管内治療によるコイル塞栓術を行う。治療後、腰部脊柱管からくも膜下腔内にマイクロカテーテルを挿入し、先端を大槽部に留置する。ここからウロキナーゼ6万単位を髄腔内投与する。くも膜下出血のウロキナーゼによる溶解程度を、頭部CTの脳底槽の高吸収域のCT値を測定することで評価する。治療後の患者の意識状態、脳血管攣縮の出現の程度、水頭症の出現頻度を検討する。 この方法を、10例の患者に応用し、その後の脳血管攣縮発生の頻度について検討した。 くも膜下出血の溶解療法を行った患者の長期予後を判定する。治療6か月目の神経症状、後遺症の有無、生活活動状況、認知機能につき調査する。ウロキナーゼを投与しなかったくも膜下出血患者との治療効果の差について比較検討した。 脳血管攣縮は、投与群で3例(症候性1例)、非投与群で6例(症候性3例)に認められた。水頭症によりシャントが必要であったのは、投与群で1例、非投与群で5例であった。3カ月後のGOSは、投与群でGood:2, Moderately Disabled:5, Severly Disabled:2, Dead :1に対し、非投与群はG:0, MD:2, SD:5, D:3であった。投与群に転帰良好例が多く、脳血管攣縮と水頭症の合併が少ないことが要因と考えられた。 重症くも膜下出血に対する瘤内塞栓術に大槽内に留置したマイクロカテーテルからのUK注入法は有用である。重症くも膜下出血に対する治療の新しい展開が開けるものと期待される。
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