研究課題/領域番号 |
24592140
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
露口 尚弘 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50295705)
|
研究分担者 |
高見 俊宏 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20305626)
足立 善昭 金沢工業大学, 付置研究所, 准教授 (80308585)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 超低磁場MRI / 脳磁図 / MEG / 小動物 |
研究実績の概要 |
昨年に引き続き小動物生体磁場計測装置(MEG)と超低磁場MRI装置での計測を行った。両装置を組み込むことはそれぞれで十分な計測が確認出来た後、今年度も単独で計測を行った。 MEGではシールドボックスおよび導出ケーブルのシールド強化を施行し、雑音による信号のSN劣化が昨年度より軽減された。 今年度はセンサやコイルの改良・試作を挙げていたため、腫瘍細胞のT1時間計測と小動物の低磁場MRI計測による脳画像の精度向上に重点を置いて研究を進めた。 ① 腫瘍細胞のT1緩和時間計測: 対象を組織片として異なる三つの生体組織のT1時間計測を行った。組織は病理検査によってa)腫瘍組織がほとんど含まれていない組織、b) 神経膠腫(グリオーマ)、c) 腎臓がんからの転移脳腫瘍と認められた組織片とし、サンプルボックスに充填し計測した。その結果、異なるT1時間を得ることができた。サンプル数が少なく統計的な結論を得るには至らなかったが、0.2 g程度の組織片からの信号を検出し、異なる緩和時間を計測できたことは大きな進展と考えた。 ② 小動物(マウス頭部)のMRI計測: 本研究の到達目標である「小動物脳にの画像化と腫瘍細胞画像化」の第一歩として、超低磁場下におけるマウスのMRI計測をおこなった。信号位置の確認のため超低磁場MRI計測の直後に永久磁石型MRI装置(0.2 T)により画像を取得して比較を行った。その結果、超低磁場において検出したMR信号が、マウスの脳の位置と同じ位置から得られていることが分かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
超低磁場MRIの小動物脳の測定において、測定条件を変更し、可能な限り測定時間を短くしたが,画像に大きなかわりはなかった。また、従来の励磁コイルは導線の発熱によりサンプルの温度が安定しない、コイルのインピーダンスが測定中に変化するなどの問題があった。そこで、試作した励磁コイルはサンプル台とは独立した構造とし、また、導線を液体窒素で冷却することとした。 そのハードの制作が、技術的な問題で遅れていたが、今期間の末に完成したため計測を再開している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、超低磁場下におけるT1時間計測やMRIに関する基礎的な技術やデータを獲得することができた。 しかし、「腫瘍組織のT1時間計測」から「微小癌もしくは神経膠腫の診断」への実現可能性を十分に検証できなかった。また得られた解剖学的画像においてまだまだ従来の高磁場MRIには及ばなかった。測定条件の最適化も重要であるが、検出できる信号強度そのものが低いために、複雑でコントラストが低い生体の画像化が困難と考えられる。そのため、超低磁場MRIにおいて装置においてS/N比の向上のためより強い磁場を発生させる励磁コイルの設計と試作を行っている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
装置の改良をおこなったが、十分な測定データ数を得られていなかったため、計測のための次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
液体ヘリウムの購入と論文作成の費用にあてる。
|