研究課題/領域番号 |
24592141
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
奥田 洋明 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40453162)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | アストロサイト / CSPG |
研究概要 |
我々は、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)により構成される新規の細胞外マトリックス構造を見出し、その形態からDandelion Clock-like Structure (DACS)と命名し、報告してる。本研究の目的はDACSが成熟脳においてどのような機能を持つかを解明することであり、本年度の計画としては、DACS構成するCSPGのコアタンパク質の同定および産生細胞の同定を行った。 マウス成熟脳より各種クロマトグラフィーを用いてCSPGを精製し、質量分析を用いて同定したところ、複数のCSPGが同定された。それらCSPGの局在を、in-situ hybridization法によるmRNA産生細胞の同定と、DACSを認識するCS-56抗体による免疫染色を組み合わせて解析した結果、Tenascin-R(TNR)が特異的にDACSの中心部のみに検出された。また、TNR mRNA発現細胞の同定を、各種細胞マーカーを用いた免疫染色と組み合わせて行った結果、アストロサイト特異的タンパクであるs100b陽性細胞にTNRが発現していること、さらにCS-56抗体を用いた免疫電顕の結果から、DACSはアストロサイトが構成していることが推察された。 以上の結果より、TNR産生アストロサイトがDACSを構成し、取り囲んでいる神経細胞や、またはアストロサイトの機能を調節している可能性が示唆される。来年度はDACS陽性アストロサイトの機能に注目して解析を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定としては、CSPGのコアタンパク質の同定および産生細胞の同定を計画していたが、おおむね達成された。しかしながら、作成した抗体が免疫染色法では機能しなかったため、代わりにin-situ hybridization法を用いたmRNAの検出により、産生細胞の同定を行ったが、目的の達成に問題は無いと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の予定としては、DACS陽性アストロサイトの機能を培養アストロサイトを用いて解析する予定である。DACSはアストロサイトが形成し、周囲の神経細胞を取り囲むように存在することから、周囲の神経細胞の機能を調節している可能性が考えられる。アストロサイトが神経細胞との情報伝達を行うには大まかに分類して2つの方法が考えられる。一つはD-セリンやATPなどのGliotransmitterを用いる。もう一つはCadherinやEphrinなどの細胞膜・外タンパク質を介する方法である。そこでDACS(TNR)がこれらの因子に関与するか否かを検討する。 ①Gliotransmitterの分泌およびグルタミン酸取り込みへの関与の解析:周囲の神経細胞の活動に反応してアストロサイトからD-セリン、ATP、グルタミン酸などのGliotransmitterが放出される。これらGliotransmitterは神経細胞上の受容体に作用し、神経細胞の活動を調節することが知られている。そこで次年度では、TNRのsiRNAを用いてアストロサイトの内在性TNRの発現を低下させた後、アストロサイトに刺激を添加し、Gliotransmitterの培地への分泌、およびRI標識グルタミン酸を用いたグルタミン酸取り込み能を検討する。 ②細胞接着因子を介した相互作用の解析:アストロサイトはEphrinなどの細胞膜・外タンパクを介して神経細胞と情報伝達を行い、スパインや長期増強の形成に関与することが知られている。そこで、TNRのsiRNAを用いてアストロサイトの内在性TNRの発現を低下させた後、アストロサイトにおけるEph/Ephrin群やCadherin群の変動をRT-PCRおよびウエスタンブロッティング、免疫染色で検討する。 以上2つの検討によりin vitroでのアストロサイトにおけるDACSの機能を解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は培養アストロサイトを用いての解析が主となるため、培養に必要な血清や母体マウス、栄養因子などの購入が必要である。また、免疫組織化学的解析を行うため、種々の抗体を必要とする。さらに、生化学実験用試薬としてはreal-time PCRを行うのに必要な逆転写酵素や二本鎖DNA結合性蛍光物質、グリオトランスミッター測定のための試薬などが必須である。上記の予算としては100万前後を予定している。 また、その他費用として学会参加費や論文校正・投稿費として30万前後を予定している。
|