研究課題
慢性虚血性脳血管障害に対する血行再建術後に発生し、重篤な転機をたどることがある過灌流症候群や、一過性脳虚血後の再潅流障害にフリーラジカルの関与が提唱されているが、その病態については未だ不明である。今回我々はこれらの基礎的な病態解析を行うために、内頸動脈狭窄を有し内膜剥離術の適応となる患者を対象に、脳循環解析とフリーラジカル及び発現蛋白の網羅的解析を行った。脳循環検査では、123I-IMP SPECTはAcetazolamide 1g静注前後に脳血流を測定することにより,脳血管拡張能を定量した。PETで15O-水およびO2を用い,脳血流量および脳酸素摂取率から算出した。過灌流を呈した症例の中には高次脳機能障害や神経脱落症状を呈することがある。これらの病態をとらえるため123I-IMZ SPECTによるneuron densityの測定や高次脳機能の検査を術前術後に行った。これにより得られた新しい見地について、学会発表と論文発表を行った。フリーラジカル及び発現蛋白の網羅的解析では、内膜剥離術中に頚静脈からのサンプリングをおこない虚血中及び再灌流における頸静脈血中のNO解析、ニトロチロシン解析、及び網羅的な蛋白発現の動態を調べるためにLC/MS/MS測定による質量分析による解析を行った。術中の脳虚血の程度は、経頭蓋的ドプラの中大脳動脈平均血流速度・近赤外線分光法による局所脳内酸素飽和度・脳波所見と比較検討した。内膜剥離術に伴い、過灌流あるいは脳梗塞を起こした症例と、それらが起こらなかった症例とを比較し検討した。質量分析による解析では、これら症例において着目すべきいくつかのピークを同定することができた。得られた結果を検討し、脳虚血に特異性が高い頚静脈血中蛋白の探索として神経細胞障害やグリア細胞障害に起因していると思われる逸脱蛋白の探索を行う基礎的な見地が得られた。
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