研究課題
神経前駆細胞(NPC)に特異的な代謝物質の分布分画を画像化することを目的として、MRスペクトロスコピーの手法を基盤とした脳内分布測定を実施してきた。これまでの研究により、1.28ppmの信号にはいくつかの信号が重なっていることがわかり、TEを短く設定したSTEAM法では、NPC代謝物と思われる比較的T2の短い成分を検出することができたものの、脳内含有量が少なく信号強度が低いために物質の同定には至らなかった。また、微量な脳内神経伝達物質として知られるγアミノ酪酸 (GABA)測定に本手法を適用することによるパラメータの妥当性について検討してきた。本年度はこれまでに得られた知見をもとに、より正確なスペクトル分離のための基礎的な検討を実施した。特に波形分離のパラメータおよびベースラインについてもベイズ統合を利用してシーケンスパラメータを最適化し、実際のヒト脳代謝物を測定した。測定には3テスラのMRI装置を用いた。GABAの測定において3.0ppmに観測されるピークは脳内のクレアチンリン酸のメチル基と重複するため観測が困難であったが、メチレン基の一つを選択的にRF照射することで結合を切断し、ピークを反転させるMEGA-PRSSS法の開発によりクレアチンリン酸のピークと分離計測可能となった。この方法を利用して正常脳内のGABA信号を計測したところ1mM程度の濃度の信号が観測された。また、正常被験者において1.28ppm付近にスペクトルピークが確認され、NPC代謝物を検出できている可能性が高いと考えられた。本研究ではMRスペクトルの分離手法を工夫することによって微量代謝物の検出を可能にした。NPC代謝物の分布変化は再生過程等の重要な生体フェイズを反映することから、MRSIによる分布評価は将来的な病態の評価指標となり得る。
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