研究課題/領域番号 |
24592150
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
片岡 大治 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (40359815)
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研究分担者 |
八木 高伸 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (00468852)
中村 匡徳 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20448046)
斉藤 こずえ 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (80398429)
梅津 光生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90132927)
飯原 弘二 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90270727)
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キーワード | 脳動脈瘤 / PC-MRI / 数値流体解析 / CFD |
研究概要 |
平成25年度は、5mm径のシリコン血管モデルを用いたファントム実験で昨年度決定したPC-MRIの至適撮像条件で、正常健常人及び本研究の対象となるflow alteration treatmentの適応となる脳動脈瘤患者の術前術後のPC-MRIの撮像を行い、データを蓄積した。その中で、同撮像条件では、血管径5mm程度の血管であれば良好な血流データが得られるが、3mm以下の血管では解析可能な流量データが得られないことが明らかになってきたため、3mm径、1.5mm径のシリコンモデルを作成して、再度ファントム実験を行った。その結果、3mm以下の細血管においては5mm径の血管とは異なる面内解像度とVENCによる撮像を行う必要があることが判明したため、細血管における血管径に合わせた至適撮像条件を再度設定した。 平成25年度までに本研究に登録されPC-MRIを撮像した脳動脈瘤患者は16例で、うち9例にバイパス術を併用したflow alteration treatmentが行われた。術前後の撮像を行い得た症例の解析の中で、flow alteration術後の血行動態が術後1ヶ月から3ヶ月にかけてダイナミックに変化することが明らかになった。またwall shear stressは術直後に変化するが、慢性期には術前の値に戻る方向で変化する傾向があることも明らかになった。 シミュレーション班では、術前のPC-MRIデータとDICOMデータからCDF解析を行い、術後の血行動態を予測して、術後PC-MRIデータと比較する作業を行っている。現段階では、細血管や の流量データが不正確であることや流量波形が一部欠落するなどの問題があり、有効な解析ができていないが、流量波形の欠落についてはtrigger windowを変更することにより解決された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度決定した至適撮像条件が、in vivoの撮像において細血管には適用できないことが明らかになったため、細血管における至適条件の検討を再度シリコンモデルを用いたin vitro実験で検討し直す必要が生じた。また、順調に臨床例での症例登録は行っているが、これまで行った解析の中で、細血管のデータの正確性が低いこともあり、CFDを用いたシミュレーションは困難な状態となっている。CFD解析を困難としていた、もう一つの原因である流量波形の欠落については、撮像時のtrigger windowを0%に設定することにより、解決されることが分かってきた。細血管の至適撮像条件も本年度の実験によりほぼ確定し、その撮像条件における正常健常人でのデータを現在解析中である。撮像条件の改善により、来年度は血流シミュレーションが可能となる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
臨床班では、国立循環器病研究センターでflow alteration treatmentを行う大型・血栓化脳動脈瘤の患者の本研究への登録を推進し、術前、術後2-4週間、術後3ヶ月、術後12ヶ月の時点で脳血管血流速度計測のためのPC-MRI、経頭蓋ドップラー検査を行っていく。また同時期の頭部MRI/MRA・3D-CTA・脳血管撮影の検査を行い、術前後の血流動態及び脳動脈瘤の変化を追跡していく。また、正常健常人及び患者データを蓄積することにより、各脳血管における脳血流のデータベースを構築していく。 非臨床班では、本年度に設定した細血管における至適撮像条件で、正常健常人、患者のPC-MRIを行い、その精度の検証を行っていく。また、患者実形状で壁弾性を有する三次脳血管モデルを作製したファントム実験を行い、臨床で得られたPC-MRIや経頭蓋ドップラーのデータと比較検討を行い、撮像条件の改善や使用限界を明らかにしていく。特に来年度は穿通枝を含んだモデルの確立に挑戦する。 細血管での流量値の精度向上や流量波形の改善などによって、患者固有の流量データを境界条件に設定したCFD解析が可能になるものと思われる。シミュレーション班では、その条件下で、登録症例における血流シミュレーションを行い、術後PC-MRIデータと比較することにより、シミュレーターとしての精度を高めていく。特にflow alterationが動脈瘤内のflowに与える影響を検討することにより、術式を最適化することが本研究最大の課題であり、それに向けて境界条件の設定方法や計算モデルの妥当性を検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
成果発表の学会にいくつかが近隣で開催されたため、旅費の支出が予定より少なくなった。また端数が残額として生じている。 物品費は、各種解析に必要なソフトウェアや流体モデル成形のための高分子材料、化学薬品、アクリル剤などの費用に用いる予定である。旅費は、各研究班の打ち合わせ及び学会発表のための旅費に充てる予定である。
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