研究課題/領域番号 |
24592151
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉山 慎一郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (30623152)
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研究分担者 |
遠藤 俊毅 東北大学, 大学病院, 助教 (00535370)
船本 健一 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (70451630)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ドラッグ・デリバリー |
研究概要 |
本研究の目的は、脊髄へのドラッグ・デリバリー方法の開発である。近年、脳・脳幹での臨床応用研究が進んでいる新規局所薬送達方法:Convection-enhanced delivery (CED) 法を脊髄へと応用し、脊髄実質に対する有効な薬剤送達を可能にしようと企図するものである。 平成24年度(初年度)は、正常ラットを用いた動物実験を行った。まず、吸入麻酔下にラット脊髄を露出し、注入用の細いカテーテルを確実に留置する方法を確立した。さらに、この方法を用いて、CED法による蛍光色素(エバンスブルー)注入をラット脊髄灰白質および白質に行ったところ、両者の薬剤分布範囲には大きな差異があることを発見した。脊髄灰白質に薬剤を注入した場合、薬剤は白質方向へと拡散していくのに対し、白質に薬剤を注入した場合には、灰白質への薬剤分布はほとんど見られなかった。本知見は、CED法による薬剤投与を脊髄疾患へと応用していく上で、極めて重要と考えられる。 これら動物実験のデータをふまえ、CED法を脊髄へと応用した場合の薬剤分布範囲を予測する方法を検討した。本研究グループは、CED法を脳幹に用いた場合の薬剤分布範囲を、コンピュータ・シミュレーションによって予測する方法を開発してきた。この方法論を、脊髄におけるCED法に用いるべく、検討を行った。正常ラット脊髄の核磁気共鳴画像を取得し、ラット脊髄の幾何学的モデルをコンピュータ上で構築した。このモデルに計算格子を設定し、脊髄を多孔質媒体とみなした流体計算を行った。ラット脊髄灰白質および白質のそれぞれに対して、porosityおよび薬剤の拡散に関する適切なパラメータを入力することで、動物実験において得られた薬剤分布をコンピュータ・シミュレーションによって再現することに成功した。 現在、これらの研究成果を学術論文発表すべく、準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脊髄実質が侵される疾患、例えば脊髄損傷や筋萎縮性側索硬化症は、いまだに極めて治療困難である。その原因の一つとして、血液ー脳脊髄関門の存在により、従来の経静脈的な薬剤投与方法では有効な薬物組織内濃度が得られないことが挙げられる。いまだ、小動物にはとどまるものの、CED法によって脊髄への局所薬剤送達が十分に可能であることが証明された。将来的に、治療困難な脊髄疾患に対して、十分な濃度の薬剤を局所的に投与できることが示唆されたのである。さらに、CED法とコンピュータ・シミュレーションを組み合わせた定位的局所薬物注入方法が、脳・脳幹に限らず、脊髄においても有用であることが証明できた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトへの臨床応用を念頭に、安全性試験を行う必要がある。すなわち、薬剤注入による脊髄間質の容積増大が、有害な神経症状を惹起することがないかどうかを確認することは必須と考える。現時点では、ラットにおける方法論をカニクイザルに適応することを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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