研究課題/領域番号 |
24592152
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小川 欣一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (60606383)
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研究分担者 |
冨永 悌二 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00217548)
中川 敦寛 東北大学, 大学病院, 助教 (10447162)
鷲尾 利克 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究員 (40358370)
荒船 龍彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50376597)
大谷 清伸 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (80536748)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 低侵襲治療 / ロボット手術 / 産学連携 / 流体工学 / 物性工学 / 破断強度 / 脳神経外科 / 下垂体 |
研究概要 |
本研究の目的は、末梢神経機能温存下に腫瘍を摘出する手術デバイス(パルスジェットメス)の開発である。本年度は、ホルミウムヤグ(Ho:YAG)レーザーのパルス発振で誘発した微小液体ジェットの流体制御に関する流体工学的な基礎実験を行い、模擬モデル実験と併せて、組織選択性向上のため各パラメータの最適化を行った。さらに、組織選択性の得られる根拠として、ブタにおける物性値ライブラリー開発を行った。その結果、ブタくも膜の破断強度は0.12 ± 0.014 MPaで、灰白質(0.030 ± 0.010 MPa)、白質(0.056 ± 0.009 MPa)と比較して統計学的有意に高く(p < 0.05)、くも膜に被覆されている神経は、適切な強度のジェットの使用により組織選択性が得られる可能性が示唆された。さらに、模擬モデル実験では、3 重量%ゼラチンが灰白質の破断強度に、また、白質の破断強度は3.5-4重量%のゼラチン相当で、破断強度は切除特性に反映することも明らかにした。さらに、現在、東北大学病院倫理委員会の承認を得て、ヒト脳摘出標本における物性値ライブラリーを開発しており、将来的な臨床応用の際に適切なパルスジェットの条件設定を行う上で、有用なデータとなるものと考えられる。当初、デバイスの試作は平成25年度を予定していたが、計画以上に開発が進展したため、予定を早め、試作に着手した。 次年度は、本年度の実験結果を踏まえ、デバイス試作を進めるともに、ラット、ウサギ、ブタモデルを用いた動物実験の評価系を構築し、動物実験を用いて末梢神経温存下の脳腫瘍摘出に関する非臨床概念実証(proof of concept: POC)を確立し、研究期間終了時に倫理委員会の承認を得て臨床応用に移行可能な知見を得る事を達成目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度は、パルスジェットの流体制御と組織選択性向上に関する工学的検討を行う計画とした。具体的には、1. 臓器・組織物性値計測、2. 流体制御に関する工学実験、3. 模擬モデルによる組織選択性向上のための実験を計画し、1に関しては、当初予定していたブタにおける神経の物性値(破断強度)測定、神経周囲膜のそれとともに達成し、英文誌に投稿中である。また、2、3に関しては、同じく、研究分担者が担当し、理論解析もとくに飛沫を生じさせないための条件設定に関して、一定の知見が得られ、学会発表を行った。 さらに、当初、デバイスの試作は平成25年度を予定していたが、計画以上に開発が進展したため、予定を早め、試作に着手した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は当初の計画通り、前年度に得られたデータを基に神経温存下手術用パルスジェットメスの試作、および、動物実験評価系の構築を行う。前者に関しては、今年度、計画を前倒しして着手したため、まず後者に着手する。動物実験モデルを用いた神経機能温存評価系の構築としては、具体的には、ラット坐骨神経を用いた検討、ブタ視神経を用いた検討を行う。電気的な伝導の有無を二点電極法で測定する。以上の結果をあわせて、年度末までに動物実験専門委員会申請を行い、動物実験を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、デバイスの施策に対して、ハンドアプリケーター試作費と石英光ファイバーを計上する。また、動物実験モデルを用いた神経機能温存評価系の構築のために、動物(ラットおよびブタ)購入費、動物飼育費、さらに評価を行うための標本製作費を計上する。次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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