悪性神経膠腫は1年生存率が50%前後と非常に予後不良な疾患である。これらの理由として放射線化学療法抵抗性が挙げられ、治療成績向上のためにはこれらの機序を明らかにする必要がある。近年、肺癌の治療抵抗性において生体ストレス応答系が重要な役割を果たすことが報告された。この応答系では転写因子NRF2が遺伝子変異により恒常的に活性化し、治療抵抗性を獲得していることが明らかになった。このような背景から悪性神経膠腫における転写因子NRF2活性と予後につき検討し、NRF2の活性上昇例では予後不良であることが判明した。本研究では悪性神経膠腫における治療抵抗性の獲得においてNRF2の果たす役割・調節機序を明らかにすることを目的として研究を行った。まず予後が比較的良好な神経膠腫症例で頻繁に認められるIDH1遺伝子の変異とストレス応答系の相互作用を検討するために神経膠腫細胞株に変異IDH1遺伝子を強制発現させた細胞株を樹立した。これを用いて転写因子NRF2の標的遺伝子の発現を定量的Realtime PCRで検討した。結果IDH1遺伝子変異の存在下ではこれらのストレス応答は反応が低下していることが判明した。さらに機序を明らかにするためにクロマチン沈降法による検討をおこないNRF2と標的遺伝子のプロモーター領域の相互作用を検討し、IDH1遺伝子変異と発現低下の原因の一つがプロモーター領域のメチル化によることが判明した。
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