研究課題/領域番号 |
24592160
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
香川 尚己 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50444542)
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研究分担者 |
保仙 直毅 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10456923)
橋本 直哉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90315945)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳腫瘍幹細胞 / 神経膠腫 / 腫瘍内免疫 / WT1 / ALCAM |
研究実績の概要 |
我々は悪性神経膠腫内に存在する腫瘍幹細胞成分を濃縮し得る細胞表面抗原としてCD166/ALCAM(以下CD166)という分子を同定した。基礎的研究により、ALCAMのsoluble formの発現が、悪性神経膠腫の腫瘍浸潤特性に関与していることが明らかとなった。また、CD166はVEGFとは関係なくある種のサイトカインを介して神経膠腫内での血管新生にも関与することを報告してきた。RT-PCRでのCD166のmRNAレベル、Western blottingによるタンパクレベル、免疫組織化学におけるCD166発現には正の相関が認められた(p<0.01)。 今回の研究では、初発悪性神経膠腫におけるCD166の発現と腫瘍発生母地との関係、再発形態や予後との関係について考察した。IDH1変異のないテント上の神経膠芽腫(以下GBM)120症例(年齢8~85歳、平均59歳)を対象として、免疫組織化学法によるCD166発現とMRIによる腫瘍発生母地との関係、再発形態、予後の関係を統計学的手法を用いて解析した。初発時MRI所見を造影領域と脳室壁(V)および大脳皮質(C)との関係を基に4つに分類したといころ、脳室近傍に発生した腫瘍では、CD166の発現が有意に高かった(p<0.01)。また、再発形態との関係では、播種性再発では明らかな差は確認出来なかったが、頭蓋内での遠隔再発を来す症例ではCD166を多く発現していた(p<0.05)。CD166陽性細胞数と予後との関係では、初発時検体でCD166陽性細胞数が多いほど予後不良であった(PFS:p<0.01、OS:p<0.01)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
WT1タンパク発現を確認しているGL261マウスグリオーマ細胞株(CD166強制発現株、CD166 knock down株)を57BL/6マウス脳内に移植しマウス脳腫瘍モデル作成し、腫瘍浸潤の程度、さらにリンパ球浸潤能を確認することを進めている。さらに、WT1ペプチドワクチン療法治療群と無治療群の組織を免疫組織学的に解析し、免疫担当細胞の浸潤や腫瘍抑制効果、WT1の発現、CD166陽性細胞の割合などの変化を解析する計画を進めている。 動物実験室での57BL/6にGL261を移植したマウス脳腫瘍モデルに関して、感染問題やケージ数に不足により、一部施行できていない実験がある。また、作成したマウス脳腫瘍モデルに対して治療前後での遺伝子発現の変化をmicroarrayにて検討予定であったが、共同研究を行っている大阪大学微生物病研究所附属感染症DNAチップ開発センターとの関係により、現在も尚、解析中の段階である。 さらに、抗癌剤治療併用群、抗CD166抗体、抗CD166抗体(ハイブリドーマにて作成)、TNFα阻害薬、COX2阻害薬、抗VEGFモノクロナール抗体(Bevacizumab)、integrinαVβ3標的治療薬(Cilengitide)投与による影響についても観察する予定であるが、上記理由により解析中の段階である。
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今後の研究の推進方策 |
CD166, 可溶性CD166を発現する腫瘍幹細胞が腫瘍内免疫に与える影響、治療抵抗性に対する検討を行っている。また、当院を中心に臨床試験を行っているWT1ペプチドワクチン療法に対する影響についても検討を行っている。さらに、腫瘍幹細胞を標的とした治療薬の可能性とWT1ペプチドワクチン療法との併用効果について検証が必要と考えている。 具体的には、WT1タンパク発現を確認しているGL261マウスグリオーマ細胞株(CD166強制発現株、CD166 knock down株)を57BL/6マウス脳内に移植しマウス脳腫瘍モデル作成し、通常のGL261マウスグリオーマ細胞移植、ALCAM強制発現細胞移植、knock down細胞移植の間で組織学的検討を行い、腫瘍浸潤の程度、さらにリンパ球浸潤能を確認する。また、WT1ペプチドワクチン療法治療群と無治療群の組織を免疫組織学的に解析し、免疫担当細胞の浸潤や腫瘍抑制効果、WT1の発現、CD166陽性細胞の割合などの変化を解析する。さらに、抗癌剤治療併用群、抗CD166抗体、抗可溶性CD166抗体(ハイブリドーマにて作成)、TNFα阻害薬、COX2阻害薬、抗VEGFモノクロナール抗体(Bevacizumab)、integrinαVβ3標的治療薬(Cilengitide)投与による影響についても観察する。また、悪性神経膠腫の分子遺伝学的なサブタイプとALCAMおよびWT1発現パターン、さらに腫瘍内免疫に関する因子との関係を統計学的手法を用いて検討する。中でも、ALCAMおよびsALCAMの発現との関係、腫瘍内免疫に関係する各種サイトカイン、immune checkpoint modulator(CTLA-4, PD-L1)などを測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず、動物実験室での57BL/6にGL261を移植したマウス脳腫瘍モデルに関して、感染問題やケージ数に不足により、一部施行できていない実験がある。また、作成したマウス脳腫瘍モデルに対して治療前後での遺伝子発現の変化をmicroarrayにて検討予定であったが、共同研究を行っている大阪大学微生物病研究所附属感染症DNAチップ開発センターとの関係により、現在も尚、解析中の段階である。
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次年度使用額の使用計画 |
上記動物実験のために動物実験室使用料、動物購入費、細胞培養維持費、組織の染色費用に費用を使用する。また、遺伝子解析費として遺伝子抽出費用、mRNA発現解析費、解析ソフト費用にが必要である。さらに、国内・国外シンポジウムでの発表および論文などを次年度に行うこととし、その経費も必要である。
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備考 |
大阪大学研究者総覧: http://www.dma.jim.osaka-u.ac.jp/view?l=ja&u=2605
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